安倍、辻元「早く質問しろよ」やりとり、真の問題点 |
下記は、前エントリを加工し、国基研ろんだんに寄せた一文です。ここにも転載しておきます。
■安倍、辻元「早く質問しろよ」やりとり、真の問題点
島田洋一(福井県立大学教授)
安全保障関連法案を審議する5月28日の衆院特別委員会で、安倍首相が辻元清美議員(斜陽の社民党を出て民主党入り)に「早く質問しろよ」とヤジを飛ばした問題で、首相は6月1日の同委において、「私の発言に関して重ねておわび申し上げるとともに、(委員長の)ご指示を踏まえて真摯に対応して参ります」と謝罪した。
ところで、当該辻元氏の「質問」はどのような内容のものだったか。長広舌を要約すれば、「日本が機雷の掃海に行くということは、相手国から見れば敵国になるわけです。日本国内や日本人も敵国の国民になって、テロに狙われる可能性は増えると思いますよ。そして、自衛隊員が死亡したり被害が出るリスクも増えると思いますよ」といった何の新味もない「巻き込まれ論、一国平和主義」である。
前後して質問した同じ民主党の長島昭久氏は、安倍首相の情勢認識にも法案の趣旨にも基本的に理解を示している。ただ長島氏は、安保関連10法案を一括提出した政府の対応に「ごった煮で出されても議論しにくい」と注文をつけたが、「ごった煮で質問されても議論しにくい」が民主党に対する首相のみならず良識ある国民の思いではないか。安倍首相は、「早く分裂しろよ、民主党は」と野次を飛ばすべきだった。
なお、民主党の枝野幸男幹事長は、辻元氏擁護の立場から、「政治家、総理大臣以前に、人としていかがなのか」と首相を批判している。辻元氏も、首相の野次に対し、「私はとても、寂しい気分というか情けない気分になりました。今これ、人の生死とか戦争にかかわる話しですよ」と嘆息パフォーマンスに出た。
しかし、果たして辻元氏や枝野氏に、人の道を説き、「人の生死」を云々する資格があるのか。
辻元氏は、社民党政審会長だった2001年11月、北朝鮮による日本人拉致に関して、「北朝鮮には(戦後)補償を何もしていないのだから、そのことをセットにせず『九人、十人返せ』ばかり言ってもフェアじゃない」、「拉致問題というのは、これまでにも世界のいろいろなところで起きている」などと、北朝鮮側に寄り添う放言をしている。
このような人物をなぜ民主党はわざわざ社民党から引き抜いて公認し、重要委員会での国会質問にまで立てているのか。国民に謝罪すべきは、民主党幹部ではないのか。
(以下、資料)
民主党広報委員会
安倍総理「早く質問しろよ」と野次 「総理大臣以前に人としてどうなのか」枝野幹事長
2015年05月28日
安倍総理が28日の衆院安保特別委員会で辻元清美議員の質問中に「早く質問しろよ」などと野次を飛ばして審議が中断したことに対し、枝野幸男幹事長が記者団の取材に応じた。
安倍総理の野次は、辻元議員が今回の安保関連法案による自衛隊のリスクなどについて質問した際に、質問の趣旨を述べ、過去の総理答弁を引用するなかで隙間をついてなされたもの。枝野幹事長は「総理が答弁席から『早く質問しろよ』という野次を飛ばす、総理大臣としてあるまじきことが、堂々と国民注視のもとで起きた」話を切り出した。「質問に当たって質問の趣旨、自らの考えを話すのは質問者として当然の権利。昨日、総理は野党の野次はけしからんと委員会で繰り返し発言した。そして今日、自ら答弁席から野次を行った」と指摘し、この事態を相当深刻に受け止めるべきだと表明した。
衆院予算委員会で安倍総理が答弁席から質問と関係ない野次を飛ばしたことを謝罪したのはつい3カ月前の出来事。枝野幹事長は「そもそも『総理大臣としての資質に欠ける』という認識を前提にしての委員会質疑にならざるを得ない。政治家、総理大臣以前に人としていかがなのか。前回を越える、より真摯な謝罪を求めたい」などと安倍総理の態度を厳しく批判するとともに、国会対策委員会や他の野党とも対応を協議している状況だと説明した。
「辻元清美オフィシャル・ウェブサイト」2015.5.28より
安倍総理が「早く質問しろよ」発言、三権分立の基本をおわかりでないのか?
……
※事務所注:ネット上には、「辻元が30分以上演説し、総理がいらだった」というデマが流されています。
・安倍総理が不規則発言を行ったのは、辻元が発言を始めてから3分50秒の時点です。
・問い合わせも多いため、下記にテープおこしを掲載します。
●2015年5月28日衆議院「我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会」
速記録(辻元事務所によるテープおこし・抜粋)
……
辻元 ……機雷の掃海だと言って、相手から攻撃される可能性もあるわけです。もしも攻撃されたらどうするんですか? ミサイルで。そこから戦火が広がるんじゃないですか? そして、中東諸国も含めて、日本が機雷の掃海に行くということは、相手国から見れば敵国になるわけです。そうすると私は心配しているのは、日本国内や日本人も敵国の国民になって、テロに狙われる可能性は増えると思いますよ。そして、自衛隊も任務が増えるわけですから、自衛隊員が死亡したり被害が出る、このリスク、リスクの論理がありますけど、増えると思いますよ。
ですから、受動的とか能動的とかそんな言葉で言うのではなくて、ちゃんと、機雷の掃海って海の掃除に行くのと違うんです。軍事作戦行動の一環なわけです。ですから、日本人が機雷の掃海に行ったことによって、世界中でテロに狙われたり、日本国内もテロで狙われるということにもつながりかねないです。
なぜそのことを申し上げるかというと、総理はちょうど一年前の今日のこの委員会で、大串委員への質問なんですよ。「なんらかの事態がありえないというのは、それはまったくいわば現実から目を背けているダチョウの論理に近いわけでありまして、起こってもらいたくない論理には目を背けるということであります」と。
要するに戦争というのはリアクションがあるんです。ちょっとだけよ、って行っていつも大きな戦争に広がっていってるわけです。総理はこうもおっしゃってますよ。
(安倍内閣総理大臣「早く質問しろよ」と呼ぶ)
絶対にないという……委員長! 総理大臣が質問者に対して「早く質問しろよ」と言って、ご自身の答弁は延々とされてきたんじゃないですか、みなさんそうでしょう!?
浜田委員長 速記を止めてください。
辻元 答弁けっこうですもう。早く質問しろよという総理大臣に、今、もう答弁はけっこうです。私はとても、寂しい気分というか情けない気分になりました。今これ、人の生死とか戦争にかかわる話しですよ。……
産経 2002年3月17日
北朝鮮の拉致問題補償してないのに「返せ」ばかりフェアじゃない
◆辻元清美議員、ネットで主張
社民党の辻元清美政審会長が昨年十一月、インターネットに掲載されたインタビューで、北朝鮮による日本人拉致問題に関連、「北朝鮮には(戦後)補償を何もしていないのだから、そのことをセットにせず『九人、十人返せ』ばかり言ってもフェアじゃない」と発言していたことが十六日、明らかになった。
辻元氏のインタビューは「カフェグローブ・ドット・コム」に昨年十一月中旬、掲載された。
この中で、辻元氏は北朝鮮という国家が拉致という罪を犯している問題点を指摘しないまま、「拉致問題というのは、これまでにも世界のいろいろなところで起きている」と提起したうえで、拉致問題解決よりも北朝鮮との国交正常化を優先させるべきだと主張。
さらに、「国交正常化の中では、戦後補償が出るでしょう。日本は、かつて朝鮮半島を植民地にして言葉まで奪ったことに対して、北朝鮮には補償も何もしていないのだから、あたり前の話」と述べている。……
産経
2015.5.28
民主、安保審議で得意の「バラバラ攻撃」 保守・リベラル両派が質問で“党内不一致”を露呈
民主党は28日の衆院平和安全法制特別委員会で、安全保障政策をめぐり立ち位置の異なる2人を質問者に立てた。保守系の長島昭久元防衛副大臣と、リベラル系の辻元清美政調会長代理がそれぞれ自らの主張を交えながら政府の考えをただす「バラバラ攻撃」を展開したが、同党は安全保障関連法案への対応を正式に決めていないこともあり、実質審議入り2日目で早くも“党内不一致”が表面化した。
「国家安全保障の要諦は紛争を未然に防ぐことだ」。安保政策の基本方針を訴えた安倍晋三首相に対し、長島氏は「おおむね首肯したい」と賛同した。 安保関連10法案を一括提出した政府の対応に「ごった煮で出されても議論しにくい」と注文をつけたが、法案には理解を示す発言を連発し、「できる限り修正を求めたい。政府は広い視野で取り組んでもらいたい」とエールまで送った。
対照的なのが辻元氏。長島氏の質疑ではやじもほとんど出ず「静かな環境」だったが、辻元氏が質問に立つと、雰囲気は一変した。
辻元氏は冒頭から「日本が戦争に踏み切る基準の変更について議論しているのか」と切り出し、政府が「戦争できる国づくり」を進めているかのような視点で挑発した。法案にも「日本がテロに狙われることにつながりかねない」と否定的な観点で追及した。
長島、辻元両氏の質疑について特別委の自民党委員からは「同じ党の2人とは思えない」との声が漏れた。