ドイツ首相の誤解を増幅した岡田民主党代表の不見識 |
下記は、国基研ろんだんに寄せた一文です。ここにも転載しておきます。
■ドイツ首相の誤解を増幅した岡田民主党代表の不見識
島田洋一(福井県立大学教授)
3月10日、民主党の岡田克也代表が来日したメルケル独首相と会談し、慰安婦問題について意見を交わしたという。
岡田氏によれば、メルケル首相は「慰安婦の問題などは、きちんと解決した方がいい。和解をすることが重要だ」と述べ、また「(ドイツでは)若者たちが自分たちを見つめなおし、ナチスがやったことについて自分の頭で考えた」と語ったという。
これを見ると、メルケル氏は慰安所とアウシュビッツを同一視する大きな誤認を犯しているとも取れる。当然岡田氏は、「きちんと」事実を説明し、韓国のプロパガンダを鵜呑みにしないよう注意を促さねばならなかったはずだ。
ところが岡田氏は、「日本は中国や韓国との和解が成し遂げられたとはいえない。過去の総括ができていないからだ」などと、誤解を増幅する迎合発言に終始した旨、自ら記者に語っている。
野党第一党の党首、また外相経験者として、不見識かつ無責任きわまりない対応である。ところが、その言動を正す声は民主党内から聞こえてこない。日本は歴史情報戦のまっただ中にあるという認識すら、彼らにはないのであろう。
産経 2015.3.10
独首相、慰安婦問題「きちんと解決した方がいい」 民主・岡田代表との会談で
ドイツのメルケル首相は10日、都内のホテルで民主党の岡田克也代表と会談した。メルケル氏は自ら慰安婦問題を取り上げ「慰安婦の問題などは、きちんと解決した方がいい。和解をすることが重要だ」と語った。会談後、岡田氏らが党本部で記者団に明らかにした。
外相経験者の岡田氏は会談で「日本は中国や韓国との和解が成し遂げられたとはいえない。過去の総括ができていないからだ」と述べた。その上で「ドイツの場合はナチスの犯罪として比較的、過去に向かいあうことが日本よりやりやすかったのではないか」とたずねた。
岡田氏や近藤洋介役員室長によると、メルケル氏は「過去に完全に決着をつけるのは不可能だ。常に過去と向き合っていかなければならない」と強調。また「若者たちが自分たちを見つめなおし、ナチスがやったことについて自分の頭で考えた」とも説明したという。
産経 2015.3.11
メルケル独首相、ナチスと日本混同か 「中韓のロビー活動の影響」安易な同一視避けるべき
ドイツのメルケル首相は10日の民主党の岡田克也代表との会談で、ナチスによる犯罪行為への反省に触れつつ、日本に慰安婦問題の解決を促した。これは、戦前・戦中の日本と独裁者、ヒトラー総統率いるナチス・ドイツとの混同とも受け取れ、問題といえる。
「米国は同盟国で、長年の付き合いがあるのでまだ知識層は分かっているが、欧州各国は韓国のロビー活動に相当影響されている」
外務省幹部はこう警鐘を鳴らす。韓国だけでなく、中国も安倍晋三首相をヒトラーになぞらえたり、南京事件をユダヤ人大虐殺(ホロコースト)と同一視したりするなどの宣伝工作活動を世界で展開している。
メルケル氏が9日の安倍首相との共同記者会見で、日本の行為を指してではないもののホロコーストに言及し、「過去の総括は和解のための前提だ」と指摘したことも、旧日本軍とナチスを一定程度混同している可能性をうかがわせる。
だが、戦前・戦中の日本では、兵士らの暴走による戦争犯罪はあっても、ナチス・ドイツのような組織的な特定人種の迫害・抹殺行為など全く行っていない。
東京裁判でインド代表のパール判事は「本件被告の場合は、ナポレオンやヒトラー(ら独裁者)のいずれの場合とも、いかなる点でも、同一視することはできない。日本の憲法は完全に機能を発揮していた」と主張している。
また、今年1月末に死去したドイツのワイツゼッカー元大統領も、有名な1985(昭和60)年の演説でこう強調しているのである。
「ユダヤ人という人種をことごとく抹殺するというのは、歴史に前例がない」
ナチス・ドイツの戦争犯罪を裁いたニュルンベルク裁判では、有罪となった19人のうち16人までが一般住民に対する殲滅(せんめつ)、奴隷化や人種的迫害による「人道に対する罪」で有罪とされたが、東京裁判では誰もこの罪に問われなかった。
同じ敗戦国とはいえ、日本とドイツでは戦いの様相が全く違う。まして日本の隣国は韓国や中国であって、ドイツが和解を果たしたというフランスやポーランドではない。安易な同一視や混同は避けるべきだろう。(阿比留瑠比)