「一外相」王毅発言と菅官房長官、議会の反応 |
下記は国基研ろんだんに寄せた一文です。ここにも転載しておきます。
■「一外相」王毅発言と菅官房長官、議会の反応
島田洋一(福井県立大学教授)
中国の王毅外相が、3月8日の記者会見で、「70年前、戦争に敗れた日本が、70年後、再び良識を失うべきではない」と非外交的表現で歴史カードを振りかざすと共に、示威行為として9月3日に予定する「反ファシズム戦争勝利・抗日戦争勝利70年」軍事パレードに、「すべての関係国の指導者と国際機関を招待する。誰であれ誠意さえあれば、われわれは歓迎する」と安倍首相も、頭を下げるなら来てよいとの意向を示した。
それに対し、菅官房長官が、「一外相の発言であり、政府の立場でコメントは控える」とコメントした。言い換えれば、「外国の一役人の発言に、日本政府の代表が反応する必要はない。無視しておく」という意味だろう。
これは正しい対応である。一党独裁国家の中国で重要なのは、共産党内における権力序列であり、行政機関のワンピースである「外相」の位置づけは、日本で言えば外務事務次官に近い。
菅官房長官は同時に、「わが国の戦後70年間の歩みは民主的で人権を守り、法の支配、国際平和への貢献については普遍だ」と暗に中国の人権抑圧、法の支配ならぬ党(人)の支配、国際秩序の攪乱を批判するごとき発言もしている。
中国の歴史カードには直ちに「現在カード」で応じるべきで、この点も適切だが、もっと明確な言葉で斬り込んでよいだろう。日本的に抑えた表現では、国際社会に充分意が伝わらない恐れがある。もっとも首相や外相の前に、議会が強く明確な発信をせねばならない。この点、日本はアメリカに比べ、遙かに弱い。
産経 2015.3.9
中国戦勝記念軍事パレードへの招待「一外相の発言」 菅官房長官がばっさり
菅義偉官房長官は9日午前の記者会見で、中国の王毅外相が戦勝記念軍事パレードに安倍晋三首相を条件付きで招待する意向を示したことについて「一外相の発言であり、政府の立場でコメントは控える」と不快感を示した。
安倍首相が今夏に発表する戦後70年談話を牽制したことに対しては「いろんなことをみなさんが言うが、わが国の戦後70年間の歩みは民主的で人権を守り、法の支配、国際平和への貢献については普遍だ」と述べた。新疆ウイグル自治区での抑圧的な政策などを念頭に、中国政府を当てこすった発言とみられる。
中日 2015年3月9日
戦後70年「良識失うな」 中国外相が日本けん制
【北京=佐藤大】中国の王毅外相は八日、開会中の全国人民代表大会(全人代=国会に相当)に合わせて記者会見を開き、「七十年前、戦争に敗れた日本が、七十年後、再び良識を失うべきではない。歴史の重荷を背負い続けるか、過去と決別するかは、日本が自ら選択しなければならない」と、歴史問題で日本をけん制した。
安倍晋三首相が夏に出す戦後七十年談話を念頭に置いた発言とみられる。王氏は「加害者が責任を忘れずにいてこそ、被害者は受けた傷を癒やすことができる」という過去の外交官の言葉を引用し、「この言葉は人と人が付き合う際の道理であり、歴史問題に向き合う正確な態度でもある。日本の為政者はこの問題にどのように対処するか、まず胸に手を当てて自問してほしい」と主張した。
今年九月三日に予定されている「抗日戦争勝利七十周年」の軍事パレード(閲兵式)を開催する目的については「歴史を深く刻み、烈士を追悼し、平和を大事にし、未来を切り開くためだ」と強調。「すべての関係国の指導者と国際機関を招待する予定で、誰であれ誠意さえあれば、われわれは歓迎する」と述べ、安倍首相も招待する可能性を示唆した。
王氏は昨年の全人代での会見で、沖縄県・尖閣諸島をめぐる日中の対立に触れ「歴史と領土の二つの原則的な問題で妥協の余地はない」と述べたが、今年は尖閣諸島に言及しなかった。

