門田隆将『狼の牙を折れ』のアンチ・クライマックスと拉致事件 |
門田隆将『狼の牙を折れ』を読んだ。連続企業爆破テロ犯らを、1975年5月19日、警視庁公安部が執念で逮捕する。
ところが2カ月半後の8月5日には、マレーシアの首都クアラルンプールで日本赤軍が起こした人質テロに屈した三木内閣が、主犯の一人佐々木規夫を「超法規的措置」で釈放。
その佐々木らが、約2年後の1977年9月28日、バングラデシュの首都ダッカを舞台にハイジャック事件を起こす。またも人質テロに屈した福田内閣は爆弾テロ・グループの二人、大道寺あや子、浴田由紀子を含む服役中の極左テロ犯6人に600万ドルの身代金まで付けて釈放した。
門田氏の力量をもってしても、このテーマはフラストレーションが募るアンチ・クライマックスで終わる他ない。
「日本立て直し」に向けた課題は多いと実感する。
なお、北朝鮮による日本人拉致の活発化と上記「超法規的措置」の関連を指摘する声もある。下記エントリ参照。
■ダッカ・ハイジャック事件での屈服と北朝鮮の拉致
http://island.iza.ne.jp/blog/entry/872676/
(以下にも貼り付けておく)
2009年1月14日
田母神俊夫・前航空幕僚長が、著書『自らの身は顧みず』の中で、興味深い指摘をしている。昭和52(1977)年9月28日に起こった日本赤軍によるダッカ日航機ハイジャック事件と、北朝鮮による拉致事件の関連である。
同書から一部引用しておく(p.157~)。
当時の福田赳夫首相は「人命は地球より重い」と述べて、赤軍メンバーら6人の釈放と要求通り身代金を支払ったのである。
服役中の人間を釈放するなどという権限はもちろん政府にもない。法治国家にあるまじき「超法規的な措置」だった。(中略)
そして実はこの事件の後、拉致事件は急増するのである。
実際、松本京子さんの拉致が同年10月21日、横田めぐみさん拉致が同年11月15日、翌年には、田口八重子さん、地村、蓮池、市川さん3組のアベック、曽我さん親子などと被害が続く。田母神氏はこう続けている。
この拉致事件の急増がダッカ事件と無関係と言えるだろうか。
北朝鮮が日本は決して反撃してこないからと高をくくって拉致や様々なスパイ工作、さらには麻薬、ニセ札など様々な犯罪行為を日本国内で実行してきたということは充分考えられる。
昭和52(1977)年9月19日に起こった久米裕さん拉致事件で、警察が国内協力者を逮捕しながら、結局不起訴となった事案が、北朝鮮に高をくくらせたろうという点は、しばしば指摘されてきた。
ダッカ事件の影響は、確かに重要な付加的ポイントだろう。
重大テロ事件に当たって思考停止に陥り、その場しのぎに逃げた福田赳夫、小泉訪朝時およびその後、拉致問題の棚上げに動いたとしか思えないその息子福田康夫等にとっては、日本は「放置国家」で構わないのであり、「人命は地球儀より軽い」のだろう。