覚書(日朝合意について) 2014/06/01 |
覚書
島田洋一
今回の日朝合意に関し、日本側関係者の労を多としたいと思います。とにかく事態を動かせば、さまざまなよい展開につながりうる。
私は、安倍首相、古屋拉致担当相に全幅の信頼を置いていますので、事態を動かしたという一点で、今回の合意には大いに意味があったと思います。
もっとも気になるのは、菅官房長官の、北の調査期間は「1年を超えることはないだろう」「1年を目途に」といった発言です。
時間を与えれば与えるほど、北は念入りに偽装工作をしてくる。情報を小出しにし、日本の反応を見ながら微修正を加えるといった作戦も可能になるでしょう。逆に急がせれば、かつてあったように、にわか作りのニセ書類を出してきて墓穴を掘るような事態にも成りうるでしょう。
合意文書には、「調査は迅速に進め」とあるのみで、5月30日に家族会に帰国報告した伊原外務省アジア大洋州局長は、期限は決まっていないと答えています。
だとすれば、被害者の早期帰国を実現する上でも、相手に念入りな偽装工作の余裕を与えないためにも、「1年を目途に」云々の官房長官発言は無用ではないでしょうか。
それはともかく、何より重要なのは、北が出してくる「調査結果」の中身です。
「死んでいました。死亡診断書を渡します。遺骨を渡します」等々は、一切「成果」として評価しない、すなわち日本側からの制裁緩和や食糧支援にはつながらない旨、明確にすべきだと思います。
いま最も注意を傾けるべきは、金正恩が「被害者を亡きものにして、遺骨を日本に渡し、カネを取れ」と命令する事態をいかに牽制、阻止するかでしょう。
日本からの制裁解除や支援につながる北の「行動」は、あくまで「生存者がいました。帰国させます」のみである旨、官民問わず、はっきり発信していく必要があると思います。
(以上)