日朝交渉に関し、明らかにすべき2点の規律違反 |
田中均元外務審議官が関わった日朝協議の記録が最終段階の2回分欠落しているという。重大な規律違反である。一体どういうことなのか。
安倍首相がかつて調査を指示したという谷内正太郎内閣官房参与(元外務次官)には、再度、古巣の不祥事に関し、踏み込んで精査してもらいたい。
今日の読売電子版の記事と安倍氏の発言(産経・阿比留瑠比記者の取材記録より)および田中氏の発言を下に貼り付けておく。
なお、この問題と併せて、次の重大な規律違反についても、調査の上、関係者に厳しいペナルティを科さねばならない(以下は、拙ブログ2008年2月9日付の一部)。
以前、拉致被害者の蓮池薫氏が、関係者に対し、「北は横田めぐみさんが93年に死亡したとしているが、自分は94年に会っている」という重要証言をしたことがある。
日朝交渉の場で大きな隠し球になるはずだったが、直前に毎日新聞がスクープし、北が自ら「93年」は書類上のミスと申告する展開になってしまった。
記事を書いたのは外務省担当記者であり、北の立場に「配慮」した外務省幹部の誰かが、意図的に情報をリークしたものと思われる。
守秘義務違反を超えた利敵行為であり、この間の経緯は、政府の責任によってよって明らかにされねばならない。
単なる「犯人捜し」の意味ではなく、こうした利敵行為には厳しい処罰が伴うとの前例が、組織の記憶として深く残ることが、再発防止のために必要である。詳しくは下記エントリ参照。
■日本人の心を読み誤った 「内通者」
http://island.iza.ne.jp/blog/entry/476923/
読売 2013年7月3日
日朝交渉記録、2回分残っていない…首相明かす
安倍首相は3日に行われた日本記者クラブでの党首討論会で「小泉(元首相)訪朝前の2回の田中(均・元外務審議官)さんの交渉の記録が残っていない」と述べ、2002年の日朝首脳会談に関する外交記録2回分が残されていないことを明らかにした。
首相が自らのフェイスブックで、この問題を巡って田中氏を批判している是非について問われたことに答えた。
首相によると、小泉内閣で官房長官を務めていた際に、当時の谷内正太郎外務次官(現内閣官房参与)に「全て記録を見たいから調べてほしい」と指示した結果、2回分の記録がないことが分かり、田中氏に確かめたところ、「知らない」との答えがあったという。
首相は「国の根幹に関わる政策について、『これは間違っている』と言うのは義務だ。(田中氏は)外交官として間違っている」と強調した。
■阿比留瑠比フェイスブック (2013/07/03)
日本記者クラブでの党首討論会(7月3日)の取材記録より
……
日本記者クラブ企画委員 田中均元外務審議官と安倍さんの応酬があった。安倍さんが田中さんに「外交を語る資格がない」と。権力の行使、発信と、最高権力者としての立場をどう考えているか?
安倍首相 権力の行使という言葉の使い方は、申し訳ないんですが間違っていると思いますね。権力の行使というのは、総理大臣の力を利用して、田中さんに発言させない、というのは権力の行使です。
私は、公の皆さんに「これは違いますよ」という私の、公の政策についての考え方を述べたのであって、当然、この...フェイスブックの場でも私に対する批判があります。ですから、それは権力の行使でも全くなくて、これは、事実、朝日新聞からは批判をされているわけです。朝日新聞に批判されるのは大変ですよ。テレビ朝日も批判すれば、週刊朝日からも批判されますから。
そのような大変な、まさに「権力」と私は戦わなければならない、という覚悟をして、書いているわけであります。
なぜ田中さんに「資格がない」か、それははっきりこの場で申し上げますと、これは、小泉訪朝の前の2回の田中さんの訪朝の記録が残っていないんです。これは当時の谷内正太郎次官に私は指示をして、官房長官時代に、「すべて私は記録を見たいから、調べてほしい」と言って、当時の佐々江賢一郎アジア局長に報告させたら2回分がなかった。本人に確かめたら、その後、「私は知らない」と言った。
これは私は、外交官として間違っていると思いますよ。そのことをはっきりと申し上げておきたい。そのことが個人攻撃かといえば、決してそんなことはなくて、「外交官の基本を踏み外した人が、おかしいじゃないか」というのが私の正義感であります。》
毎日 2013年06月24日
田中均氏:アジア調査会主催講演会での発言要旨
田中均・元外務審議官が24日、東京都内であったアジア調査会主催の講演会で語った発言の要旨は次の通り。
……
<質疑>
質問者……田中さんが記録を残さなかったと。本来外務官僚は記録をどう残すべきか、どうしたのか。……
田中均……記録については、私一人で交渉するわけじゃない。守秘義務に外務省退職後も縛られているから詳細について申し上げることはできないが、私が交渉担当者だが、誰かがきちんと記録をとっている。誰かが通訳する、それはもうマストなんだ。一人で行って、記録を付けないで交渉するなんてことを北朝鮮とやるなんてあり得ない。怖いんですよ。
私の言葉なんかたぶん全部テープにとられている。テープで取られている時に、記録残さないなんてないんですよ。客観的な立場の人が記録を残すということでやってるわけで、局長がその記録を書くわけではない。それを管理するわけでもない。
私が今の質問に対して、記録が作られてない、ということは断じてない。それを私がこれあります、とお見せするわけにはいかないということも事実だ。水掛け論になるかもしれないが、何を言っておられたか、最初。記録なんて何もない、とおっしゃってたんですよ、最初は。今は記録が一部ない、と。そんなことを巡って、私は議論するつもりはまったくない。そういうことで、そこに焦点が当たって、本当に大事なことが議論されないということの方が私はよっぽど罪が重いと思う。……