武器輸出三原則緩和による日印戦略関係の強化を(8完) |
下記は、拙稿「武器輸出三原則緩和による日印戦略関係の強化を」の結語である。前回分まではここをクリックしてもらえばある。
ニューデリーにあるマハトマ・ガンディー終焉の家を歩く国基研・有志議員訪印団(2011年9月)
結語
野田政権による武器輸出三原則等の見直しにより、インドが「我が国との間で安全保障面での協力関係がある国」に明確に位置づけられる限り、日印関係の障害が一つ取り除かれることとなった。
ただし、インドのNPT非加入、CTBT未調印などを理由とした軍民両用テクノロジーの移転規制等が速やかに撤廃されるかはまだ不透明である。
もしインドが核を放棄してNPTに加入するなら、南アジアにおける力のバランスは中国優位に大きく変わるだろう。それが日本の国益に適うとは思えない。
2011年12月4日、ジュリア・ギラード首相率いるオーストラリア政府が、NPT非加盟を理由に続けていたインドへのウラン禁輸措置を解除したが、その際、豪紙『オーストラリアン』は「常識の勝利」と題した社説で、次の趣旨を論じている。
「インドは、責任ある国家であり、隣国パキスタンと中国が核武装する地域における安定化勢力である」、そのインドが非核保有国としてNPTに加盟すれば力の均衡が崩れる。NPT非加入を理由としたインドへのウラン供給拒否は、「知的に擁護不能」(ギラード首相)であり、インドとの協力強化につながる政府の禁輸解除決定を支持する―。
この関連で言えば、自らはアメリカの核抑止力に頼りながら、インドには核抑止力の放棄を要求する日本の偽善的な態度もまさに「知的に擁護不能」である。
ブッシュ米大統領は、「自由の側に傾く勢力均衡(a balance of power that favors freedom)」という動的な勢力均衡概念を掲げ、インドのNPT「例外化」、そのことを通じた米印関係の強化を、政権の中核的事業と位置づけた。[1]
国際社会がすでにNPT上の「例外化」を決めた中、インドがNPTに非核兵器国として加入する可能性はない。「インドに対し、非核兵器国としてのNPTへの早期加入を求めるとの我が国の立場には変わりはない」と、日本政府が建前だけにせよ言い続けることは、国民レベルの友好増進に負の影響しかもたらさないだろう。ましてや、NPT非加入を理由に経済取引に制約を加えるというのは、愚かな自傷行為という他ない。
アメリカはNPT上の「核兵器国」、インドは暗に公認された核兵器国である。CTBTについては、アメリカは未批准、インドは未調印・未批准である。事実上大差はなく、核問題全般に関して、インドを同盟国アメリカと同様の位置づけで扱うというのが、「日印の戦略的グローバル・パートナーシップ強化」を進めるにふさわしい態度だろう。
[1] 2002年国家安全保障戦略(2002年9月17日)中にある言葉。下記論文も参照。Daniel Twining, “Diplomatic Negligence: The Obama administration fumbles relations with