理念的に誤った武器輸出三原則がまた障害に |
「国際紛争の当事国かその恐れのある国」には軍民共用テクノロジーも含め防衛装備品を移転しないという武器輸出三原則の一項は理念的に誤っている。これは逆の場合を考えれば明らかだ。
尖閣で日中の艦船が衝突という事態になった途端、それまで日本と防衛協力関係にあった国が、日本は「国際紛争の当事国かその恐れのある国」になったため協力は打ち切る、過去に引き渡した艦船や航空機の交換部品も供与できないと通告してきたらどうなるか。
その国との友好関係は終わり、敵対感情すら生じるだろう。
理念を共有する国がファシズム独裁国家に襲われ「国際紛争の当事国」になった場合など、むしろ支援を強化するのが当然だ。
下記ニュースにある通り、航空自衛隊の次期主力戦闘機をめぐり、武器輸出三原則がまた障害として立ちはだかってきた。
この問題については、昨年、インドとの戦略関係強化を論じた論文の中でかなり詳しく取り上げた。
次のエントリから、何回かに分けて、ここにも転載したいと思う。
産経
戦闘機F35の日本製部品提供に暗雲 武器輸出三原則が障壁に
2013.1.29
航空自衛隊の次期主力戦闘機(FX)として導入する最新鋭ステルス戦闘機F35Aライトニング2への日本製部品の提供をめぐる問題が、日米両政府の懸案として浮上していることが28日、分かった。両政府は日本国内に部品製造と修理の拠点を設ける方向で協議中だが、日本政府内で、国内で製造・修理する部品をイスラエルに提供することが「武器輸出三原則」に抵触するとの意見が出されているためだ。来月の日米首脳会談でも厳しい議論になるとみられる。
政府は昨年6月、F35について平成28年度に取得する4機分を米政府と契約、最終的に42機を調達する。FXの選定では国内の戦闘機の「生産基盤維持」も重視し、F35は最終組み立てに加え、機体の4割にあたる部品の製造に日本の防衛関連企業を参画させることを目指している。
日米間では、両国以外でF35を導入する国にも、日本国内で製造した部品を提供する方向で調整が進められている。日本の関連企業が在日米軍や他国軍の機体を修理することも想定しており、日本はF35の「部品製造・修理拠点」と位置づけられる。
武器輸出三原則に抵触するとの指摘は、イスラエルがF35を購入する契約を締結していることによる。イスラエルはイスラム原理主義組織ハマスと停戦中だが、戦闘が再開される恐れがあるほか、核開発を進めるイランを攻撃する可能性も指摘される。
三原則では「国際紛争の当事国かその恐れのある国」への輸出を禁じている。政府は23年12月、三原則を緩和し、米国以外の国と装備品を共同開発・生産できるようにしたが、「国際紛争の助長回避」の原則は維持している。
このため外務省内で「イスラエルへの部品提供は控えるべきだ」との慎重論が出ている。これに対し防衛省側は「現時点で提供国を細かく詰める必要はない」と主張している。
米側も日本政府内の意見対立を把握。日本がイスラエルを部品提供国から除外するのであれば「部品製造・修理拠点」を韓国に置くことを検討しているという。そうなれば防衛関連企業への打撃は深刻で、機体価格のさらなる高騰を招きかねない。
米政府は、日本に拠点を置くことを期待しているが、日本政府高官は「(米国は)意見対立が長引けば見切りをつける」と危惧している。
日経
武器輸出三原則「関係を整理」 F35部品製造で防衛相
2013/1/29
小野寺五典防衛相は29日の閣議後の記者会見で、航空自衛隊の次期主力戦闘機F35の国内での部品製造に関し「武器輸出三原則とどのような整理ができるか精査していく」と述べた。日米両政府は日本国内に部品製造と機体の最終組み立てのラインを設ける方向で検討しており、国内製造部品をイスラエルなど紛争当事国に輸出する可能性を踏まえた発言だ。
武器輸出三原則は「国際紛争当事国かその恐れのある国」への輸出は禁じている。民主党政権時代に例外措置を設けた後も、理念は堅持している。イスラエルが核開発を続けるイランや、イスラム原理主義組織「ハマス」と緊張関係にあることを受け、日本政府内には部品提供に慎重な声が出ていた。
時事 2013/01/29
F35、武器三原則抵触も=機体に国産部品、紛争国売却なら
航空自衛隊が次期主力戦闘機として導入する米ロッキード・マーチン社のF35戦闘機をめぐり、日本企業が製造に参画した場合、紛争当事国などへの兵器提供を禁じた「武器輸出三原則」に抵触する可能性があることが29日、分かった。政府は予定通り日本企業の参画を後押しする方針だが、国会で野党から追及を受けるのは必至だ。
F35はレーダーに探知されにくいステルス戦闘機。空自は2016年度から順次導入し、最終的に42機を調達する予定。
防衛省によると、F35は主翼などの部品を国内で製造する方向で米側と調整している。武器輸出三原則は「紛争当事国かその恐れのある国」への売却を禁じているが、米国が日本製部品の組み込まれたF35を紛争当事国に売却しない保証はないという。
小野寺五典防衛相は29日、首相官邸で記者団の質問に答え、「例えば日本で製造した部品が(周辺国との紛争が絶えない)イスラエルに行くF35に組み込まれる可能性がある」と認めた。その上で、「武器輸出三原則とどのような整理ができるか、しっかり精査したい」と述べた。