日米韓連携の試金石―デヴィド・スネドン拉致事件 |
アメリカ人拉致疑惑に関するいくつかの記事を貼り付けておく。デヴィド・スネドン氏が北朝鮮の工作員に拉致されたとすれば、雲南省の現場から一旦国境を接するミャンマー(ビルマ)に連れ出され、船で北に向かった可能性が高い。
アメリカ主導の国際制裁に晒されていたミャンマー軍事政権は、当時、中国および北朝鮮との関係を深めていた。現地の事情に詳しい人は、中国・ミャンマー国境は「穴だらけ」(porous)だったとも言う。
しかし現在のミャンマー政権は、積極的に民主化を進め、アメリカはじめ自由主義諸国との関係改善に乗り出している。日米両政府は、ミャンマー側に対し、今こそスネドン事件に関する情報提供を求めるべきだ。
豊富な資金力と独自のネットワークを持つ米情報部が本格的に動き出せば、その過程で、日本人拉致に関する有力情報も出てこよう。もちろん日本側も、自国民に加え米国人の拉致についても情報の収集・提供に努めねばならない。
なお、デヴィド・スネドン氏は、二十歳前後に2年間韓国で研修しており、もともと日本より韓国にゆかりが深い。同国に少なからぬ知己もいるはずだ。この事件の解明努力は、情報分野における日米韓三国の連携強化に向けた試金石ともなろう。
産経
「弟、北が拉致と確信」マイケル・スネドン氏 救う会から情報「中国で逮捕、引渡された」
2012.5.15
【ワシントン=古森義久】中国で消息を絶ち、北朝鮮に拉致された疑いがある米国人留学生、デービッド・スネドン氏の兄、マイケル氏(53)は14日、産経新聞のインタビューに応じた。マイケル氏は「日本側からの新情報で弟が北朝鮮に拉致されたと確信するにいたった」と述べ、今後、米国政府と議会に強く働きかけていく意向を示した。
デービッド氏は24歳だった2004年8月10日、中国雲南省シャングリラ県の観光名所、虎跳渓近くのユースホステルを出たまま行方不明。ユタ州在住のスネドン一家では長兄のマイケル氏らが現地で調べたが、米中両当局ともに今も「消息不明」としている。
マイケル氏は国際翻訳会社社長で現地に計3回行き、調査結果を80ページの報告にまとめた。報告で「デービッドは本人の意思に反して、他者あるいは特定組織に拉致、拘束された」との結論を出していた。
マイケル氏はインタビューで、日本の「救う会」から「米国人青年が同時期に同地で脱北者を支援していたと疑われ、中国当局に逮捕された。その後、北朝鮮の工作員が連行した」との新情報を得た-と述べた。その上で「現地で調べたときも、北朝鮮関連の人物や事象の存在を強く感じた。新情報で弟の拉致を確信した」と語った。
理由としてマイケル氏は、韓国留学経験のある弟は朝鮮語が流暢で、北朝鮮に関心ある米国人と親しく交際し脱北者支援をしていると誤解される要素があった▽現地ではその数カ月前に北朝鮮の化学兵器開発に関与した科学者が脱北してきて中国当局に拘束され、本国送還された▽弟が最後に立ち寄った軽食堂は朝鮮人母娘が経営していた-ことを挙げた。
さらに、北朝鮮では日本人拉致被害者、曽我ひとみさんの夫のジェンキンス氏が解放された直後で新たな英語の教員役を必要としていた▽この軽食堂では中国語を話さないアジア系の若い女性が弟に同行しており、脱北支援への関与をうかがわせる▽事故死や中国当局に拘束のままという可能性も考え徹底調査した結果、その可能性はほぼ完全に否定できる-ことなどを列挙した。
マイケル氏は「北朝鮮の外国人拉致は実証された非人道的な行動であり、米国と日本が緊密に連帯して、国際犯罪として追及し、デービッドや他の被害者を救出したい」と強調した。
産経
北朝鮮の米国人拉致疑惑「日米で共闘を」 自民特命委、政府に要求
2012.5.16
自民党は16日午前、拉致問題対策特別委員会(古屋圭司委員長)を党本部で開き、北朝鮮に拉致された疑いがある米国人留学生、デービッド・スネドン氏の問題に関し、米政府と共闘して日本人拉致問題解決につなげるよう政府側に要求した。
先の訪米で米政府要人と会談した拉致被害者家族会の飯塚繁雄代表は「疑惑がはっきりしてきたのでフォローを日米両国でやってもらい、日本人拉致問題につなげられればいい」と要請。古屋氏も「日本政府もしっかり対応してもらいたい」と求めた。
政府側の三谷秀史拉致問題対策本部事務局長代理は「今回の成果をしっかりフォローしていきたい」と述べた。
産経
米要請で捜索実施と中国 拉致可能性の米国人
2012.5.10
中国外務省の洪磊副報道局長は10日の定例記者会見で、2004年に中国で北朝鮮に拉致された可能性が指摘されている米国人デービッド・スネドン氏について中国当局が当時、米側の要請で捜索を行ったと明らかにした。
副報道局長によると、四川省成都の米国総領事館が04年8月、スネドン氏が滞在していたとみられる雲南省に捜索を依頼。「公安当局が全力で捜索したが、行方は分からなかった」という。
北朝鮮による拉致被害者家族会の飯塚繁雄代表らは今月8日、米国務省でナイズ副長官(総務担当)と面会し、スネドン氏が中国で北朝鮮脱出住民(脱北者)を支援する活動をしていた疑いをかけられ、北朝鮮に拉致された可能性が高いとの新情報があると伝えた。(共同)
2012年5月16日 読売新聞
北の人権問題取り組む韓国人4人、中国で拘束
【ソウル=中川孝之】北朝鮮の人権問題に取り組む韓国人4人が3月下旬から、中国で身柄を拘束されており、韓国で抗議の声が広がっている。
韓国外交通商省によると、4人は3月29日、遼寧省大連で、最高刑が死刑の「国家安全危害罪」容疑で公安に逮捕され、同省丹東の施設に拘置された。
このうち金永煥氏(49)はかつて金日成主席の信奉者だったが、後に思想転向した著名な活動家。逮捕時は脱北者の保護に当たっていたとされるが、適用罪が重いことから、民主化目的で、訓練した脱北者を再び北朝鮮に送り込もうとしたとの説も出ている。
金氏の支援者らは、「北朝鮮人権活動を弾圧する不当な逮捕」と釈放を求めており、韓国与党セヌリ党も16日、「中国は北朝鮮当局を意識して重罪を適用した」と中国を批判した。
5月10日は朝からワシントンの保守系有力シンクタンク「ヘリテージ財団」を訪れ、ブルース・クリングナー研究員(Bruce Klingner 元CIAで朝鮮半島担当)と意見交換した。同財団のエレベータ内に当日の予定が貼ってあり、われわれとの面談も画面一番下にある。
Key Words: David Sneddon, US citizen, China, Yunnan, abduction, North Korea