衛藤征士郎、安倍晋三両氏が激しいやり取り―自民党拉致特別委 |
主議題は、衛藤征士郎衆院副議長ら「日朝国交正常化推進議連」メンバーが年内にも計画している訪朝についてである。
興味深いことに、当の衛藤氏(以下、衛藤晟一議員と区別するため、征士郎と呼ぶ)自らも出席し、主に安倍晋三元首相との間でかなり激しいやり取りが展開された。
特に問題になったのは、征士郎氏が示す次の2点の認識である。
・(正常化)議連の基本的な立ち位置は、国交正常化へのテーブルを作り、正常化後に拉致やミサイル、核などの問題をテーブルに載せ、ひとつひとつ解決する努力をしていくということだ。
・(日朝正常化ができない決定的な要因は)拉致問題について平成20年8月の日朝実務者協議で全面的な調査のやり直しなどで合意したが、それが履行されずにいること。
日本側の当時の与党、自民党の外交部会、外交調査会で合意内容が了承されなかった。…… 残念ながら、この年の9月に福田首相が辞任、国交正常化が前に進まない状況を作り出してしまった。 その「非」は、往々にして日本側にある。……拉致問題の全面解決なくして国交正常化に踏み込んではならないという考え方は問題。 拉致問題は国交を正常化し、公式のテーブルの上に載せて解決していく方が早い。
征士郎氏の認識の詳細は、11月27日付産経新聞のインタビューにある(ネット版のみ掲載。この日の自民党の委員会でも、コピーが配られた)。下記エントリ参照。
■衛藤征士郎「日朝宥和利権議連」会長のインタビュー
https://island3.exblog.jp/22033892/
征士郎氏は、この日も上述の趣旨を繰り返した。平沢勝栄、岩屋毅議員が理解を示す発言をした。
他方、安倍晋三、古屋圭司、柴山昌彦、衛藤晟一議員が、征士郎訪朝団に反対する意見を述べた。
議論の核心は以下のやり取りだろう。
征士郎 政府は何の交渉もできておらず、進展がない。議員外交で動かしたい。
安倍 圧力を掛けて対話を引き出していくのが原則だ。私が首相の時も、相手が約束を破った以上、正式の交渉はしなかったが、水面下での接触はあった。今も、あるのかも知れず、政府の主張より甘い立場で議員外交を行ってはならない。
衛藤晟一 「非は日本にある」と思っている人が行っても、相手の手の内にはまるだけだ。つけいる隙を与えてはならない。
最後に、古屋委員長が、下記決議案への賛同を求め、多数の「賛成」の声の中、承認された。征士郎氏は敢えて発言を求め、「私は反対だ」と明確に意思表示した。
最近、政府間の交渉が始まりそうな気配があるが、征士郎訪朝団は、良からぬ方向の攪乱要因としてくすぶり続けそうだ。
■拉致問題の棚上げと国交正常化交渉先行に反対する決議
平成23年12月16日
自由民主党政務調査会
拉致問題対策特別委員会
わが党政権下より、わが国の北朝鮮に対する基本的な方針は一貫している。すなわち、「拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して国交正常化を図る」というものである。
これまで政府は、すべての拉致被害者の一刻も早い生還を実現すべく「対話と圧力」という一貫した考えのもとに行動をとってきた。
拉致問題については、平成20年8月に日朝で合意した調査のやり直しに関し、わが国政府が北朝鮮側に早期の調査開始を繰り返し要求しているにもかかわらず、未だ調査を開始していない。また、核・ミサイル問題についても、ミサイル発射、核実験を強行した後、日米韓を始めとする関係国の働きかけにも関わらず、六者会合への復帰にも応じていない。
我々は、このような現状を憂慮するとともに、北朝鮮の具体的行動を引き出すためには、わが国が国際世論をリードし、北朝鮮に対して引き続き圧力をかけていく必要がある。
このような中、超党派の議連「日朝国交正常化推進議員連盟」のメンバーが北朝鮮を訪問して、拉致問題解決前に国交正常化交渉を先行させる議員外交を行うという動きが出てきている。
現在、わが国は拉致問題などを理由にして公務員の訪朝禁止、国民の訪朝自粛という制裁をかけている。国民の代表たる国会議員が国交正常化交渉を先行させる行動をとるならば、拉致被害者救出を国家の最重要課題としている、わが国の立場が変わったかのごとき誤ったメッセージを伝えることになりかねない。
北朝鮮は、日本及び国際社会の経済制裁を早期に終了させる為、拉致問題を事実上棚上げにして国交正常化を優先する交渉を望んでいる。それに対してわが国は、あくまでも、国交正常化交渉の前に、拉致被害者全員の送還と真相究明、及
び拉致実行犯の引渡しを求めるという原則的立場を崩してはならない。
我々は、「日朝国交正常化推進議員連盟」の訪朝に断固反対するとともに、わが国の拉致問題に対するこれまでの対応方針を堅持していくことを求めるもので
ある。
以上決議する