復興税構想会議、発足直後の実態 |
時事通信のサイトに新潮社の雑誌『フォーサイト』の一部記事が載っている。復興構想会議(一部では、「増税で、復興壊そう会議」と呼ばれているらしい)に関して興味深いレポートがあったので引いておく。
時事通信
Foresightコンテンツ-新潮社ニュースマガジン
http://www.jiji.com/jc/v?p=foresight_701
(このページの記事は新潮社から提供を受けたものです)
求心力なし「学級崩壊」状態の復興構想会議
ジャーナリスト 野々山英一
東日本大震災に関する復興構想会議が船出早々、揺らいでいる。……
会議は震災後の日本の将来像を有識者の見地からまとめ、6月に1次提言、年内に答申を出すことになっている。
防衛大学校の五百旗頭真校長を議長に、建築家の安藤忠雄氏、東大教授の御厨貴氏、脚本家の内館牧子氏、臨済宗住職で作家の玄侑宗久氏ら各界の著名人が集った。顔触れは重厚だ。この会議で夢のある提言を出して日本に元気を取り戻す。そして政権も上昇気流に乗る――。菅首相はそう目論んでいる。
だが議論は初日の4月14日から、脱線ぎみだった。五百旗頭議長は、今回の震災について「16年前(の阪神大震災)が、かわいく思えるほどだ」と発言。今回の悲惨さを強調しようとしたのだろうが、阪神大震災の被災者を逆なでする言い回しだった。五百旗頭氏は、もともと学識者の間では「言葉が軽くて話が長い」と揶揄されてきた。その懸念が冒頭から表面化してしまった。
議長職には当初、佐々木毅、小宮山宏の東大総長経験者のどちらかが就任する運びだった。だが、両氏は東芝、東電という「原発関連企業」の社外取締役、監査役を務めていたことがネックとなり、見送られたとされる。五百旗頭氏は「3番目の候補」だった。そのことは他の委員も感づいているからリスペクトが足りない。……
……委員たちの菅首相に対する忠誠心はゼロに近い。雑談の中では「1次答申を出すころ、首相は誰になっているのか」「菅さんが交代しても、この会議は続くのかな」というささやきが漏れるという。
委員間の温度差も大きい。
例えば14日の初会合で、哲学者の梅原猛氏は「この震災は文明災だ」と目に涙を浮かべながら持論を展開した。そのこと自体、委員たちに異論はないが、被災三県の知事たちは「今文明を論じ合っている時か」「その前に放射能の恐怖から解放してほしい」と思ってしまう。
本格的な日本の再創造を議論しようとすると被災地は反発する。被災地の要望ばかり聴いていると復旧の域を出ず、提言、答申は迫力も夢もないものになってしまう。「3.11後」の復興案づくりは、このジレンマを抱えながらのスタートとなった。だが指導力に大きな疑問符がつく菅首相と、「学級崩壊」の様相を呈する構想会議に、この連立方程式を解く力はあるのだろうか。
東日本大震災復興構想会議の初会合冒頭で黙とうする(右から)菅直人首相、五百旗頭真議長、御厨貴議長代理、梅原猛特別顧問ら=2011年4月14日、東京・首相官邸【時事通信社】