冷厳な現実を示した国基研の国際シンポジウム(米中印からゲスト) |
本日(4日)は、朝から夕方まで、国家基本問題研究所の国際シンポジウム(下記)に、同研究所企画委員の一人として参加した。
海外からのゲストの内ピルズベリー氏は、レーガン政権時代、ソ連のアフガニスタン撤退を決定づけた、アフガン・ゲリラへのスティンガー・ミサイル供与に奔走した人物として、知る人ぞ知る存在である。
スティンガーは携帯式の精密誘導地対空ミサイルで、ソ連のヘリコプターや航空機を少なからず撃墜した。
映画にもなった『チャーリー・ウィルソンの戦争』でも、原作を読むと、アフガン・ゲリラ支援に中心的役割を果たしたのはウィルソン下院議員としつつも、スティンガー供与の局面に限っては、ピルズベリーの議会・関係各省への働きかけが大きかったと述べている。
さて同書では保守強硬派と描かれているピルズベリー氏だが、今日のシンポジウムでは、親中的発言に終始した。ちなみに同氏は中国語が堪能である。
特にアジアの問題では、米中2大国が話し合い決めていくのがよいとの意見がアメリカでは今や主流であるとの趣旨を、特に留保もつけず、繰り返し強調していた(米中でうまくやろうと、横に座った中国の楊氏に握手を求める場面すらあった)。
その後、夕食会の席で、同氏は、日本が「平和主義」から脱却するようずいぶん期待したが、大きく失望させられたと述懐していた。
日本が軍事的な役割を果たせず、存在感を示せないなら、アメリカは、軍事的存在感を着実に高めている中国と物事を決めていくことになる、日本は覚悟すべきだ、というメッセージは、同氏の意図がどこにあれ、聴衆に確実に伝わったと思う。
その意味で、同氏を招聘した意義はあった。
楊明傑氏は、中国共産党の公式路線を、かなり聞き取りにくい英語ながら(要するに発音が悪い。commission〈コミッション〉が、コミシャーになるといった具合。同時通訳にとっては拷問だったろう)、忠実丁寧に説明していたようだ。
こちらは招待していないが、日本語に堪能な「未来亜州研究会・王行虎」の名刺を持つ人が同行してきていて、シンポジウムのみならず前日のレセプションや今日の夕食会の場でも楊氏に付き添っていた。
テーマ
インド洋の覇権争い―21世紀の大戦略と日米同盟
【基調講演・パネリスト】
ブラフマ・チェラニー(インド政策研究センター教授)
マイケル・ピルズベリー(米国防総省顧問)
楊明傑(中国現代国際関係研究院副院長)
長島昭久(防衛大臣政務官)
【コメンテーター】
田久保忠衛(国家基本問題研究所副理事長)
【司会進行】
櫻井よしこ(国家基本問題研究所理事長)
日時 2010年06月04日 (金) 10:00~18:00
場所 早稲田大学・国際会議場(井深大記念ホール)