鳩山氏の「政治哲学」に対する米保守派の「大いなる異論」 |
月刊『文藝春秋』2009年11月号に掲載されたポール・ウォルフォウィッツ元米国防副長官のインタビューに注目すべき部分がある(カッコ内、島田要約・補足)。鳩山由紀夫氏に対し、アメリカの、特に多くの保守派が、同様の反発を示している。
鳩山氏が表明した、アメリカと中国の狭間にある日本の位置に関する見解について、大いなる異論を唱えたい。……歴代の日米政府がいったい何のために、今日まで堅固な日米関係の構築に腐心してきたかということの意味を、鳩山氏はおわかりなのだろうか。
アメリカには、アジアを支配する魂胆などさらさらない。アメリカが戦後一貫して望んできたのは、アジア全域に平和と安定が訪れることであり、そのための手助けに邁進し、犠牲を払ってきた。これはアメリカ人としての私の見方だが、客観的にも正しい見方だと自負している。
……(中国が地域支配の誘惑に駆られ)台頭した場合でも、日本が中立的な立場をとるべきだと考えているとすれば、それはとんでもない過ちだといわざるを得ない。もし日本がそのような間違いを犯すとしたら、結果として痛い目に遭うのは日本だ」
アメリカにも傍若無人な振る舞いは様々にあるが、圧政の堅持、他の専制国家との連携強化を基本とする共産党一党独裁の中国とは質的に違う。
全体主義勢力の拡張政策と、それに対抗するため日米の先人が重ねてきた安全保障上の努力を同一視する鳩山氏の姿勢は、単に無神経というにとどまらず、日米同盟の根幹を危うくしかねない。
全体主義を脅威と捉え、自由・民主・法治・人権という価値観を共有する国々との連携を強化するという安全保障の基本をわきまえていない人が、鳩山政権には、首相以下多すぎるようだ。
「史上最低の防衛相」といわれる北沢俊美氏に至っては、安保条約はじめ日米の合意文書を何一つ読んだことがないのではないか。地図上でアフガニスタンやイランを指し示せるかも怪しい。
参考のため、鳩山由紀夫氏の論文「私の政治哲学」(『ボイス』2009年9月号)の該当箇所およびニューヨーク・タイムズの英訳要約版(アメリカ人は当然こちらを読んでいよう)を掲げておく。
覇権国家でありつづけようと奮闘するアメリカと、覇権国家たらんとする中国の狭間で、日本は、いかにして政治的経済的自立を維持し、国益を守っていくのか。これからの日本の置かれた国際環境は容易ではない。
How should Japan maintain its political and economic independence and protect its national interest when caught between the United States, which is fighting to retain its position as the world’s dominant power, and China, which is seeking ways to become dominant?
(A New Path for Japan, by Yukio Hatoyama, The New York Times, August 27, 2009)
【ついでに】
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