国家基本問題研究所・提言 「新政権は北朝鮮急変事態に備えよ」 |
今日は、午前8時から昼過ぎまで、国家基本問題研究所の企画委員会に出た。
テーマは盛りだくさんだったが、その一つ、「ポスト金正日」の朝鮮半島に関わるかに関する提言がまとまった。
昨夜6時から9時過ぎまで、同研究所・朝鮮問題題研究会で議論し作成した最終案を、さらに企画委員会で練り、決定したものである。
本日午後、研究所の下記サイトに全文を掲載した。
http://jinf.jp/suggestion/archives/1426
詳論を除いた冒頭の「提言」部分のみ、ここにも載せておく。
■提言
新政権は北朝鮮急変事態に備えよ
-韓国による自由統一推進を戦略目標とし中国の半島支配を防げ-
国家基本問題研究所
平成21年9月11日
政策提言
1.韓国による自由統一推進を我が国の戦略目標とし、北朝鮮急変事態に備えよ。
2.日本政府は、2009年6月16日にオバマ・李明博が表明した「自由民主主義と市場経済に則った平和統一を志向する」と明記した自由統一ビジョンを早急に支持せよ。
3.北朝鮮急変事態に備えた日米韓3カ国の戦略対話を政府レベル、軍(自衛隊)レベル、民間専門家レベルで充実させよ。
4.戦略対話の中では、米韓軍北進作戦が発動された場合、日本がどのような協力を行うのか、拉致被害者の安全確保と救出のために米韓両国にどのような協力を求めるかも十分に詰めておくことが求められる。
5.自由統一の主体はあくまで韓国だが、日米両国は韓国内の自由統一推進派を積極的に支援することによって日米韓友好の新たな地平を開くべきだ。
北朝鮮の独裁者金正日の医学的寿命の限界が見えてきた。数年以内に死亡や重病で執務不能になることが十分あり得る。2009年に入り後継者指名作業開始と国防委員会強化など金正日が焦っている表れと見られる兆候もでてきた。
独裁政権の変化は独裁者の死後に起きる。スターリン死後のソ連、毛沢東死後の中国などがよい例だ。金日成死後に大きな変化がなかったのは、すでにあの時点で金正日が独裁権力の大部分を握っていたからだ。
金正日の死後、北朝鮮で国内の統制がとれなくなる混乱状態、すなわち北朝鮮急変事態が起きる可能性がある。その場合に備えて米韓軍の北進、中国軍の介入などが準備されている。朝鮮半島はいま現状維持ではなく大きな変化の時を迎えようとしている。
日本にとって望ましいのは、朝鮮半島における自由民主主義体制の拡大であり、異常な反日政策の払拭である。それが、半島の人々の自由意思に基づき、平和的かつ速やかに実現されるのが理想と言える。
問題は、中国共産党(以下、中共)だ。中共は、自らの全体主義的統制システムを維持するため、自由の拡大を阻止すべく、対内的にも対外的にも積極的に動いてきた。
「ポスト金正日」の北朝鮮について、中共に従属した政権(以下、従中政権)樹立など、日本の国益と相容れない形で影響力確保を図ってくるだろう。そうした戦略環境を前提として、日本の政策を考える必要がある。
すでに米韓首脳は6月16日「自由民主主義と市場経済に則った平和統一を志向する」と共通ビジョンを明らかにした。米韓軍は北朝鮮混乱時に備えた北進作戦を準備している。韓国が米韓同盟、日韓基本条約、核拡散防止条約を維持している限り、統一韓国は日本の国益に最もかなう。
極端な抑圧体制の崩壊後、自由化を求める北朝鮮の人々が、中共の干渉を排し、治安を確保しつつ、独自に自由民主主義体制を打ち立てていける可能性は、残念ながら高くない。
①自由民主主義を理念とし、②破壊分子を押さえ込む治安能力を持ち、③朝鮮半島北部を治める正当性を国際的に認められる存在は、韓国政府以外にないと思われる。
したがって、「韓国による自由統一推進」が、日本の国益に即した戦略目標となるだろう。
従中政権下では、有事の際、北の軍事施設を初めとして、港湾、空港、高速道路などは中国軍によって利用されることになろう。北の急変事態に対する日本の支援は、韓国による自由統一と連動する旨を明確にする必要がある。従中政権を容認するような「2段階統一論」は、日本としては支持できない。
そのことを見据えた上で、最善のシナリオ実現のための努力を積み重ねるべきだ。日本が犠牲と負担を避けて無責任な行動をとれば、日米同盟のきずなは弱まる。結果として米国が日本の頭越しに中国と協議し従中政権を容認することになりかねない。逆に、日米韓が朝鮮半島における自由民主主義拡大を共通戦略とし、北朝鮮急変事態に備えることができれば、中共の東アジアにおける覇権を抑えることができる。まさに、北朝鮮急変事態への対応は日米同盟の将来を左右すると言える。
国家基本問題研究所
櫻井よしこ
田久保忠衛
潮 匡人
遠藤浩一
大岩雄次郎
島田洋一
高池勝彦
冨山 泰
西岡 力
恵谷 治
久保田るり子
平田隆太郎
越前蕎麦『その字』(福井市内)のかき揚げざるそば。堅めのそばに、エビや貝柱入りのかき揚げが大きい。