保守派が危機感を抱くオバマの最高裁人事 |
アメリカのある政治トーク番組で、次のような観測を述べた人がいた。
大統領選でクリントン陣営の支持が欲しいが、散々「旧政治家」と批判してきた手前、ヒラリーを副大統領候補に指名しにくいバラク・オバマとしては、将来、最高裁判事に指名するとの「裏約束」でヒラリー陣営にアプローチする可能性があると。
アメリカの最高裁判事(9人)は終身制で定年がない。欠員が生じた場合、大統領が後任を指名するが、上院の承認が必要であり、上院を通らなければ人事は振り出しに戻る。
レーガン大統領によって指名されたが、エドワード・ケネディらリベラル派上院議員の猛烈なローブロー攻撃を受け、結局否決されたロバート・ボーク判事の例などが有名だ。
現在、米最高裁は、保守派4人、リベラル派4人、中間派のアンソニー・ケネディ判事がキャスティングボートを握る状態といわれる。
ブッシュの任期中(まだ半年を残すが)に、二つ空席が生じ(保守派の1人が死亡、中間派の1人が引退)、いずれも保守派の優秀な判事(ジョン・ロバーツ、サミュエル・アリート)が、上院の承認を得て就任した。なお、バラク・オバマは、いずれの人事にも反対票を投じている(マケインは、いずれにも賛成)。
判事の年齢や健康状態から、来年1月から始まる次期大統領4年の任期中に、3つの空席が生じる可能性があるといわれる。
オバマの投票歴や、オバマ夫妻が、ゲイのカップルにも結婚資格を与えるべきとの主張をしていることなどから、保守派は、オバマ政権誕生に対し、強い危機感を隠さない。
ゲイ同士にも法的に結婚を認めると、例えば、孤児を養子として斡旋する業務を行っている宗教団体が、ゲイ・カップルからの養子斡旋要請を拒否すると、「不当な差別」ということになって、免許停止などの処分を課されかねない。
これは、保守派にとって、良心への耐え難い侵入ということになる。
ちなみに、日本の場合、憲法第24条に、「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立し……」とあるため、ゲイ・カップルにも「結婚」を認める法律や条令を作ろうとしても、憲法違反となる。
米保守派には、合衆国憲法に、結婚は「一人の男と一人の女」のみによって成立すると新たに書き込もうという運動があるが、彼らにとって、米リベラル派が深く意識することなく作った日本国憲法第24条は、実にうらやましい存在だろう。