北朝鮮による保険金詐欺 |
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この件は、チャック・ダウンズから、かねて色々話を聞いていた。おそらく、実態はこういうことだろう。
軍用の備蓄倉庫が失火で半焼した。倉庫にはもちろん火災保険など掛かっていない。そこで、ヘリコプター(ロシア製。こちらは損害保険に入っている)が、機器の不具合で倉庫に墜落したことにし、ヘリコプターの対人・対物賠償保険を利用してカネ(搭乗者・ヘリコプター・倉庫・貯蔵物資に生じた被害の補償)を取ろうとした……。
なお、保険金は、名のある国際的な会社(保険組合)から北朝鮮の銀行口座に直接振り込まれる “きれいなカネ”で、ニセ札や闇勢力との麻薬取引で得たキャッシュのように、マネーロンダリングをする必要がない。違法資金と認定され、凍結される心配もない。 国際援助食糧などを隠匿中に腐らせてしまった場合、事故の被害に遭ったことにすれば、まったく元手なしに、処分場行き物資を、巨額のクリーン・マネーに変えられるわけだ。 北にとって、保険金詐欺は、うまみのある資金獲得ルートといえよう。 今回、ロンドンの保険会社が、あえて法廷闘争の道を選んだことを歓迎したい。 北朝鮮が“保険金詐欺”で外貨獲得 災害や事故捏造? 利益の7割は金正日総書記へ 08/05/10 14:57更新 北朝鮮が国際的な再保険制度を利用し、事故や被害を過大申告したり、捏造(ねつぞう)する手口で、欧州の保険会社から多額の保険金を得ているとみられることが、脱北者や米国の北朝鮮問題専門家らの話で分かった。利得は年3500万ドル(約36億円)で、このうち2500万ドル(約26億円)が金正日総書記へ献金されたという。北が新たに「国家犯罪」として大規模詐欺を働いている実態が浮かび上がっている。 ■隠語は「耕す」 再保険制度は、自然災害や大事故などでは巨額の保険金支払いが予想されるため、保険を引き受けた損害保険会社が自らのリスクを分散させるよう、他社に保険料を払って巨額の支払いに備える「損害保険会社の保険」。英国のロイズ保険組合が引受先として有名。 「保険金詐欺」を行っているとみられるのは、朝鮮労働党組織指導部傘下の「朝鮮国営保険総会社(KNIC)」。組織の責任者は金総書記とされる。 北朝鮮で保険業務に携わった脱北者らによると、KNICの利益は年3500万ドルで、大半が詐欺。詐欺行為を「耕す」と表現し、文書偽造などで損害を誇張・捏造。総書記には目標額を報告していたという。 1995年には最高人民会議(国会に相当)常任委員会で「保険法」が整備され、「資本主義保険市場の特性を利用すれば、大きな金を稼ぐことができる」とする金総書記の指示も伝えられたとされる。 ■ヘリ墜落も周辺に被害なし 北朝鮮問題専門家で、元米国国防総省アジア局副局長のチャック・ダウンズ氏によると、2005年7月に妊婦を西海上の島から平壌へ搬送中だった高麗航空のヘリコプターが、平壌近郊の倉庫に墜落、炎上したとして、KNICがロンドンの再保険会社に被害補償(約4000万ドル=約42億円)を要求。倉庫にはコメや小麦、インスタントラーメンなどを保管していたとしている。 ところが、ヘリコプターが墜落したという倉庫周辺の樹木にまったく被害がなく、火元も内部とみられるほか、ヘリコプターが出動したとされる島には発着場がないことも衛星写真などから判明。KNICは破綻した主張を隠すように、保険会社による「事故現場」の調査を拒否しているという。 このため保険会社側は請求を「詐欺」として支払いを拒否。独自調査をし、裁判で係争中だという。他にも、旅客船沈没など大規模事故4件で、英・露の保険会社に保険金支払いを要求したとされる。北朝鮮は、欧州の複数の再保険会社と分散契約し詐欺行為の発覚を逃れていたが、最近は、相次ぐ請求に保険業界が警戒を強めているという。 ■でっちあげは常套手段 北朝鮮はこれまでにも偽札や偽たばこ製造、麻薬生産といった不法行為で外貨を獲得してきた。専門家は「北朝鮮では保険会社もすべて国家ぐるみで、書類偽造などは簡単。他の手段に比べて『濡手で粟』のうまみがあり、手口を変えて盛んになる可能性がある」と指摘する。 文書偽造や事故のでっち上げは、北朝鮮の常套手段の一つ。日本人拉致問題でも、被害者の「死亡台帳」や偽遺骨を提供してきた「前科」がある。北朝鮮側は保険金請求にあたって、被害の甚大さを主張するため、大量の“証拠写真”を提供してきたが、今回も不審な点は多い。 被害を受けたとされる食料の写真を見た脱北者は「もともと悪くなっていたもの」などと証言。品質が悪化して食用に適さない状態になっていた可能性が高いという。 米国の北朝鮮問題専門家、チャック・ダウンズ氏は「北朝鮮は物資の保存状態が悪く、劣化することが多い。食用に適さなくなった物資を“保険金詐欺”の道具に使えると考えたのではないか」と推測する。 ■10年以上前から… 保険金の請求書類などは、北朝鮮の裁判所が受理・認定する形が取られ、海外の裁判所で北朝鮮側の主張を崩すのは難しいとされていた。このため、詐欺が疑われる事案でも保険会社側が支払いに応じるケースがあり、十数年前から北朝鮮の外貨獲得手段となったという。 拉致被害者の「家族会」を支援する「救う会」の島田洋一副会長は「偽札、麻薬、偽たばこと比べると、保険金詐欺は額は少ないが、直接現金が得られるのが大きい」と指摘。「各国が他の外貨獲得手段への監視を強化する中、第三者を仲介にするなど新たな方法を模索する可能性もある」としている。
産経・住井記者の記事はよくまとまっている。追跡取材に期待したい。
イザ!ニュース