訪米報告(1) |
下記は、救う会全国協議会ニュース用に書いた原稿だが、若干補訂の上、ここにも転載しておく。
■訪米報告(1) 島田洋一
家族会、救う会、拉致議連からなる訪米団が、4月末から5月はじめに掛けてワシントンを訪れた。
国会日程上、拉致議連からの参加は厳しい状況だったが、最終的に松原仁議員(議連事務局長代理)が5月1日午前(現地時間)駆けつけてくれ、また、別の経済ミッションでワシントンを訪れた中川昭一議員(議連会長代行)も、帰国後の対応等を協議する場を訪米団との間で二度設けるとともに、大使館の担当者に適宜指示を出してくれた。
まず人権問題をめぐる動きややりとりについて報告する。
◇北朝鮮自由週間
今回の訪米は、日程的には、ワシントンで「北朝鮮自由連合」(スザンヌ・ショルティ代表)が主催する北朝鮮自由週間(North Korea Freedom Week 4月26日~5月3日)に合わせたものである。
在米あるいは韓国から訪れた脱北者代表、アメリカの人権活動家、有志議員やそのスタッフらとともに、議事堂前集会(4月29日)、脱北者を囲む昼食会(於、下院議員会館。5月2日)などに参加した。
議事堂前集会には、エド・ロイス下院議員(クリストファー・ヒル国務次官補を常に最も厳しく追及する議員の一人)が顔を見せ、椅子もない野外の集まりながら、長時間、熱心に関係者と話を交わしていた。
5月1日午前11時からは、上院議員会館前で、サム・ブラウンバック上院議員を中心に6人の議員が、脱北者代表らとともに、難民強制送還を続ける中国政府を厳しく批判する会見を行った。
http://island.iza.ne.jp/blog/entry/565260/
実はこの日、朝8時半からブラウンバック議員と面談した際、会見に同席しないかと勧められたのだが、たまたま同時刻にジョン・ボルトン前国連大使との面会予定が入っており適わなかった。
ブラウンバック議員が残念そうな顔を見せたので、やはりこうした場合機動的に対処できるよう、家族会から二名の参加を得ておくべきだったかと感じた(今回は増元事務局長一人)。なお、ブラウンバック議員は、上記会見に、かなり以前に渡したブルーリボンバッジを着けて臨んでくれた。
ワシントンに着いた4月28日午後には、「北朝鮮自由連合」役員らとともに、議会図書館ホールで、脱北者の悲劇を描いた韓国映画『クロッシング(境界越え)』(6月公開予定)の試写を見た。個人的には、ラストが哀しすぎるようにも思うが、北と中国当局の非道がうまく描かれた実に印象的な映画である。多くの人に見てもらいたい。
関係者から、ぜひ日本でも上映を実現したいので、助言願いたいとの話もあった。
できるだけ多くの議員事務所を手分けして訪れ、踏み込んだ協力を求めるということが、「北朝鮮自由週間」を通じてのアクション・プログラムとして設定されていた。
われわれ訪米団による有力議員のオフィス訪問は、その一端という意味もあった。
◇アメリカでも話題になったフランス人拉致問題
イリアナ・ロスレーティネン下院議員(外交委員会・共和党筆頭理事)の事務所を訪れた際、同議員の政策スタッフ(正式には、下院外交委員会の上級スタッフ)デニス・ハルピン氏から、仏紙『フィガロ』がフランス人拉致疑惑を大きく報じた旨を紹介した韓国紙『朝鮮日報』(英語版)の記事を示された。議会内外の関係者に広く手渡しているという。
五輪聖火リレー、転じて中国政府の人権弾圧にスポットライトを当てる機会とするに当たってはフランスの果たした役割が大きかった(従って、中国国内でフランス系スーパーが攻撃対象となった)。
ハルピン氏も、われわれ同様、北朝鮮による拉致を糾弾する声がフランスで盛り上がれば大きな力になるとの認識を持っており、来たるサミットの場で、福田・サルコジ連名の厳しい共同声明くらい出すのかと聞かれた。日本政府の具体的動きは知らないが、当然そうあるべきだろうと答えた。日本政府は、機を逸することなく、フランス政府・世論への働きかけを強めねばならない。
◇民主党関係者たち
米民主党の大統領予備選で優位に立つバラク・オバマ候補のアジア政策ブレーンといわれるジェフ・ベイダー氏(ブルッキングス研究所上級研究員)と面談する機会があった。
同氏は、六者協議との関係で、拉致問題をめぐる動きに注目している、最新状況を教えてほしいとのことで、もっぱら聞き役に回り、熱心にメモを取っていた。代表団からは、状況説明とともに、参考のため、「北に拉致されたキム・ドンシク牧師の現状が明らかにされない限り、テロ支援国指定の解除に賛成しない」としたイリノイ州議員団の北朝鮮国連大使宛て書簡(2005.1.28付。同州選出上院議員であるオバマ氏も署名)をベイダー氏に手渡した。
同書簡については、救う会全国協議会ニュース (2007.04.18)参照。
http://www.sukuukai.jp/mailnews.php?itemid=1225&catid=43
民主党関係では、ジョー・バイデン上院外交委員長のアジア政策スタッフ、フランク・ジャヌージ氏にも会った。彼とは、過去にも、何度か面談している。
上院におけるヒル国務次官補の最大の庇護者ジョー・バイデン議員のスタッフらしく、国交を正常化し、関係全般を改善していく中で、拉致を含む人権問題の解決を図るというやり方もあるのではないかなどと語っていた。
松原議員、増元氏が事実を上げつつ大いに反論したが、クリストファー・ヒル氏との面談時間が迫ってきたので、適当に切り上げた。