ニュース価値ゼロに近いヒル訪朝 |
クリストファー・ヒル氏によると、北朝鮮側は核施設の無力化に取りかかる用意があると述べたそうだが、幸いなことに、ヒル氏の発言を受けて、「事態が急速に動き出す」などと騒ぎ立てるメディアも、今ではほとんどなくなった。
発言ではなく行動を見るとの安倍首相の簡明なコメントは、まことに適切だった。
先頃、雑談の折り、ある外務省幹部が、「ヒルというのは口も軽いが、性格的にも実に軽い男です」と評していた。
それにしても、ブッシュ政権は大きくパワー・ダウンした。私が金正日なら、今のライス・ヒル・コンビはまったく怖くないだろう。
ライス氏は、与えられた仕事をてきぱきこなす優秀なキャリア・ウーマン・タイプで、チェイニー、ラムズフェルド、ウォルフォウィッツ、ボルトンなどこわもての一群が引っ張る攻撃型チームの中で働いているうちは、それなりに力も発揮してきた。
しかし、自らチーム・リーダーとして、必要に応じて攻撃的な戦略も立て、国務省の組織的抵抗を抑え込んで、事を進めていくといった主導性を期待しても無理であろう。
もっとも、ライス・ヒル・コンビには、かつて日本の対北外交を牛耳った福田康夫(官房長官)・田中均コンビのような陰湿さはない。そこは救いと言える。
「アメと無知」の河野外交のように、ナイーブさが醜悪の域にまで達しているわけでもない。しかし、頼りないことは事実だ。
「まあ、ヒル氏も彼なりに汗をかいて頑張っていますから」と弁護する向きもあるが、そんなことを言えば、ネビル・チェンバレンもよく頑張っていた。
わざわざミュンヘンまで飛び、ヒトラーと難しい話し合いを行い、チェコ首脳部に圧力を掛け屈服させた。イギリス外務省も、事前折衝に相当汗をかいただろう。
が、基本戦略が間違っている中で、何を頑張ろうが、マイナス、せいぜいゼロにしかならない。
アメリカ政府の迷走は困った話だが、嘆いていても始まらない。日本は独自戦略で北への圧力を強めていけばよい。朝鮮総連の壊滅がまず当面の課題だろう。