「圧力を掛け対話を引き出していく以外ない」(安倍首相) |
昨日、首相官邸における安倍首相と拉致被害者家族会の面会に同席した。
首相の「圧力を掛け、対話を引き出していく以外ない」というその場での言葉は、「圧力と対話」というスローガンをより正しく明確化したものだ。
圧力緩和や利益提供は、北朝鮮ペースの、すなわち虚偽と時間稼ぎに満ちた「対話」にしか生まない。
制裁や法執行強化というボディ・ランゲージも立派な対話であり、特に北朝鮮のような相手には、それを通じてのみ、はじめてテーブル上の意味ある対話も生まれる。
産経 2015.4.4
【主張】拉致再調査 政府は毅然と圧力強めよ 協議の中断あってはならない
北朝鮮が一方的に日本政府を非難し、日朝政府間協議を中断する意向を通知してきた。拉致被害者らの再調査報告は、さらに遅れることが予想される。
日本側に非難される点など、さらさらない。拉致は、北朝鮮という国家による、極めて残酷な誘拐事件である。被害前の状態に戻す原状回復への努力を自ら放棄することなど、本来、あり得ない。
安倍晋三首相は拉致被害者家族会と面会し、「わが国としては全く受け入れることはできない。今後とも毅然とした姿勢で対応に当たる」と述べた。
≪非は北朝鮮の側にある≫
当然である。政府はすでに北朝鮮に対する日本独自の制裁措置を2年間延長することを決めている。だが北朝鮮側が約束を履行しない以上、「行動対行動」の原則にのっとり、再調査の開始に合わせて一部緩和した制裁措置の復活や、新たな制裁についても検討すべきだろう。
家族会の飯塚繁雄代表は面会した安倍首相に対し「被害者の確実な帰国の実現以外望んでいない。焦らず対応してほしい」と求めたのだという。冷静な物言いには頭が下がる思いだ。
首相との面会を終えた家族会の横田早紀江さんも「報告を期待するのではなく、被害者を帰国させる気があるのか。そのことをはっきり伝えてほしい」と述べた。
横田さんの娘、めぐみさんは昭和52年11月、新潟市の中学校でバドミントン部の練習を終えての帰宅途中、北朝鮮の工作員にさらわれた。13歳だった。
突然、失踪した娘を両親は必死の思いで泣きながら捜し回った。北朝鮮による拉致の疑いが明らかになると、両親そろって街頭に立ち、救出を訴え続けた。
平成14年9月、小泉純一郎元首相の訪朝時に拉致の事実を認めたが、めぐみさんは「死亡」と伝えられた。横田さんは信じなかった。16年には「遺骨」の提出を受けたが、日本側のDNA鑑定により別人のものと判明した。
めぐみさんは今、50歳になる。なんとむごい仕打ち、なんと長い年月だろう。それは他の拉致被害者、家族にとっても同様である。被害者には何の落ち度もない。非はすべて北朝鮮の側にある。
北朝鮮は昨年7月、拉致被害者の安否や、日本人配偶者らについて包括的に再調査する特別調査委員会を立ち上げた。当初は昨年の「夏の終わりから秋の初め」に最初の報告がある予定だったが、「調査はまだ初期段階にある」と先延ばしにされたままだ。
また北朝鮮側は初回報告に拉致被害者の安否情報を含めず、日本人配偶者らに関する報告の用意があると打診してきたとされる。
「拉致最優先」を基本方針とする日本側が打診を拒否したのは当然だ。北朝鮮側は再調査するまでもなく、拉致被害者の現状について把握しているはずである。
≪捜索非難は当たらない≫
北朝鮮は政府間協議を中断させる理由として、国連人権理事会が拉致問題などをめぐる北朝鮮の人権状況に関する決議を採択したことや、マツタケの不正輸入事件で日本の警察が朝鮮総連の許宗萬議長宅を捜索したことを挙げた。
国連人権理は3月、北朝鮮の人権侵害を非難する日本と欧州連合(EU)提出の決議案を賛成多数で採択した。決議は、日本人ら被害者全員の速やかな帰還を北朝鮮に求めている。
その内容は、昨年3月に国連人権理で採択された決議をほぼ踏襲したもので、北朝鮮が改めて協議中断の理由とする根拠が分からない。何より拉致問題が、国際的に非難されて当然の懸案であることの自覚が足りない。
議長宅の捜索は、外為法違反事件の捜査で、警察当局が容疑者の関係先として不正の解明のために必要と判断して行ったものである。「前代未聞の国家主権侵害行為」との非難も、謝罪要求も、的はずれというほかない。
安倍首相は家族会に「全ての拉致被害者が日本の土を踏むことができる結果を出すため、あらゆる手段を尽くす」と改めて約束し、そのためには「拉致問題を解決しなければ、北朝鮮が未来を描くことは困難であるとしっかり認識させることだ」と述べた。
北朝鮮との交渉における原則は「行動対行動」とともに「対話と圧力」である。いまは強く圧力をかけ続けるべき時ではないか。