「報告書」より圧力強化が重要 |
時事 2015/03/28
拉致問題、事態打開へ圧力=北朝鮮は反発-政府
政府は日本人拉致被害者らの再調査をめぐり、具体的な進展がない現状を打開するため北朝鮮への圧力を強めている。輸出入の全面禁止など、日本独自で行う制裁措置の2年間延長を近く決定、北朝鮮に行動を迫る方針だ。ただ、こうした日本側の姿勢に北朝鮮は強く反発。26日にはマツタケ不正輸入事件に関し、警察が在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)幹部の自宅を捜索したこともあり、態度を硬化させている。
京都府警は経済制裁で禁じられている北朝鮮からのマツタケを不正に輸入した関係先として、朝鮮総連トップの許宗萬議長の自宅を家宅捜索した。山谷えり子国家公安委員長は27日の記者会見で「法と証拠に基づき厳正に対処した」と、捜索は拉致問題の進展とは関係がないことを強調した。
しかし、政府は独自制裁を延長する閣議決定を31日にも行う予定で、捜索を「北朝鮮にプレッシャーを与える意味合いがある」(政府関係者)と見る向きもある。27日には国連人権理事会で、日本と欧州連合(EU)が共同提出した拉致問題などの解決を求める決議が採択された。
朝鮮総連は捜索を受けて公表した声明で「再調査が行われている最中に暴挙が強行され、両国間の合意を日本側が一方的に破棄したも同然」と非難。日朝両政府は、外務省局長級協議を今月下旬にも開催する方向で調整していたが、首相官邸筋は「公式協議開催の雰囲気はない」と語る。
日本政府が圧力を強める背景には、1年をめどとして北朝鮮が昨年7月に開始した再調査の期限が迫っていることがある。岸田文雄外相は27日の会見で「北朝鮮に対し迅速に、そして正直に調査結果を通報するよう求める方針に全く変わりない」と強調したが、政府内からは議長宅の捜索を「北朝鮮が調査報告を遅らす口実にするかもしれない」と懸念する声も漏れる。