安倍首相の靖国神社参拝と日中「4項目合意」 |
外務省幹部・OBはもとより、官邸内の安倍首相側近のほとんども、中国側解釈に寄り添う形で、安倍首相が靖国神社を再訪しないよう、手を替え品を替え説得する構えのようだ。
4項目合意の最終調整のため訪中した谷内(やち)正太郎国家安全保障局長(元外務省事務次官)も、「3年に一度行けばいい」という言い方で、事実上、安倍首相が任期中二度と靖国神社に足を踏み入れないよう「アドバイス」しているという。
さて、上記一文は果たして安倍首相の靖国不参拝を意味するものなのか、本日午前の国基研企画委員会でも話題になったが、結論は、「行動を見ればよい」である。
すなわち安倍首相が今年靖国神社に参拝しなければ、中国側思惑通りの合意が為されたということになり、参拝すれば、「若干の認識の一致」に靖国参拝は含まれなかったということになる。4項目合意の「真意」は行動によって明らかになる。
安倍首相には、周りの雑音に煩わされることなく、年来の信念に基づいて決断し、淡々と実行して欲しいところだ
外務省
日中関係の改善に向けた話合い
平成26(2014)年11月7日
日中関係の改善に向け,これまで両国政府間で静かな話し合いを続けてきたが,今般,以下の諸点につき意見の一致をみた。
1 双方は,日中間の四つの基本文書の諸原則と精神を遵守し,日中の戦略的互恵関係を引き続き発展させていくことを確認した。
2 双方は,歴史を直視し,未来に向かうという精神に従い,両国関係に影響する政治的困難を克服することで若干の認識の一致をみた。
3 双方は,尖閣諸島等東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていることについて異なる見解を有していると認識し,対話と協議を通じて,情勢の悪化を防ぐとともに,危機管理メカニズムを構築し,不測の事態の発生を回避することで意見の一致をみた。
4 双方は,様々な多国間・二国間のチャンネルを活用して,政治・外交・安保対話を徐々に再開し,政治的相互信頼関係の構築に努めることにつき意見の一致をみた。
英語版 (English)
Regarding Discussions toward Improving Japan-China Relations
November 7, 2014
Toward the improvement of the Japan-China relations, quiet discussions have been held between the Governments of Japan and China. Both sides have come to share views on the following points:
1. Both sides confirmed that they would observe the principles and spirit of the four basic documents between Japan and China and that they would continue to develop a mutually beneficial relationship based on common strategic interests.
2. Both sides shared some recognition that, following the spirit of squarely facing history and advancing toward the future, they would overcome political difficulties that affect their bilateral relations.
3. Both sides recognized that they had different views as to the emergence of tense situations in recent years in the waters of the East China Sea, including those around the Senkaku Islands, and shared the view that, through dialogue and consultation, they would prevent the deterioration of the situation, establish a crisis management mechanism and avert the rise of unforeseen circumstances.
4. Both sides shared the view that, by utilizing various multilateral and bilateral channels, they would gradually resume dialogue in political, diplomatic and security fields and make an effort to build a political relationship of mutual trust.
東京新聞 2014年11月14日 朝刊
日中合意「拘束力なし」 尖閣 従来通り強調
岸田文雄外相は十三日の参院外交防衛委員会で、先の日中首脳会談に先立ち両国政府が発表した四項目の合意文書について「法的拘束力のない文書だ。日中間で現状一致できているものをまとめただけで、国際約束を伴うものではないと認識している」と述べた。民主党の白真勲氏への答弁。
白氏が「約束を伴わないなら、(合意文書に)違反してもいいのか」とただしたのに対しては「法的拘束力はないが、日中間で尊重されるべきものである」と語った。
合意文書は谷内(やち)正太郎国家安全保障局長と中国の楊潔篪(ようけつち)国務委員が七日にまとめた。「尖閣諸島など東シナ海の海域において近年、緊張状態が生じている」として日中が「異なる見解を持っている」と認める内容。中国側では、日本側が尖閣をめぐる領有権争いがあることを認め、譲歩したと報道されている。
文書は不測の事態を避けるための危機管理メカニズムの構築や、日中間の戦略的互恵関係発展させることなども盛り込んでいる。
岸田氏は、この文書には当事者による署名はないと認めたうえで、尖閣をめぐる日本の立場は、「領土問題は存在せず、わが国の尖閣諸島に関する立場は全く変わっていない」と強調した。
産経 2014.11.8
日中首脳会談へ 中国各紙、1面トップで報道 外交交渉“勝利”
【北京=矢板明夫】8日付の中国各紙は、日中両国政府が双方の関係発展のための4項目で7日に合意したことを1面トップなどで大きく伝えた。
発表された合意文書には、中国が日本に要求してきた「(尖閣諸島の)領有権問題の存在を認める」「首脳は靖国神社に参拝しない」といった内容は盛り込まれなかった。しかし、国際情報紙の環球時報は「釣魚島(尖閣諸島の中国名)について『異なる見解を有する』ことを初めて明文化した」などとし、中国側が外交交渉で日本側に“勝利”したとの印象を読者に与えようとしている。
また、国際問題研究院の曲星院長は中国メディアに対し、「双方は歴史を直視する」の文言について「靖国問題で日本が正しい対応をするという意味だ」との解釈を示した。「4項目合意は中国が過去2年間、日本に対して妥協せずに闘争した成果だ」と主張するメディアもあった。
共産党機関紙の人民日報は、「両国関係を良好な発展の軌道に踏み出させる必要な一歩だ」などと評価した。
一方、日中首脳会談が行われることについて、ネット上では「国のトップ同士が会うことは良いことだ」「貿易を促進して景気を良くしてくれ」といった賛成の意見がある一方、「結局、弱腰外交しかできないのか」「日本人は信用できない。交渉すれば必ずだまされる」などの批判的な声も少なくなかった。