武器輸出三原則の緩和―「インド」で安倍政権の真価が問われる |
化学防護服は、少しでも隙間や漏れがあると兵士の命に関わる。テクノロジー面でも製造過程の面でも信頼できる日本製への需要は高いという。
中国製などは安いが、防護服自体に含まれた有害物質で兵士が体を壊す可能性がある。
なお英国への輸出については、民主党野田政権の時代から方針が決まっていた。
今後、核兵器不拡散条約不加盟(加盟の可能性がないので、未加盟より「不加盟」が適当)だが理念を共有し、中国ファシズムという共通の「敵」を有するインドへの輸出が実現するかが、安倍政権の真価が問われる場面となろう。
武器輸出三原則の三番目は、「紛争当時国又はそのおそれのある国」には防衛装備品や関連テクノロジーを輸出しないとしている。 パキスタンとの間でカシミール紛争、中国とも複数地点で領土問題を抱えるインドは、「紛争の怖れ」が潜在的にかなり高い地域に属する。 日印の軍事協力にくさびを打ち込みたい国にとっては、インドとの間で緊張を高め、「紛争の怖れ」増大を演出しさえすればよいことになる。実際中国は、インドの兵力を中パ両方面に分散させる狙いで、近年意図的に領土問題を尖鋭化させていると見るインド側専門家は多い。 お宅は「紛争の恐れ」が増したから協力を打ち切る、すでに供与した軍用車両などの交換部品も渡せない、などと言う国を一体誰が信用するだろうか。
紛争の有無に関わりなく、価値観を共有する国との軍事協力は積極的に行う、そうでない国には輸出規制を掛けると、体制理念を「原則」の柱に据える必要がある。
武器輸出三原則とインドの関係については、下記エントリ参照。
■武器輸出三原則緩和による日印戦略関係の強化を(2)
http://island.iza.ne.jp/blog/entry/2995241/
産経 2013年3月2日
日英で化学防護服開発 武器輸出緩和、豪には潜水艦技術
日英両政府が、脅威が高まっているテロへの対処能力を向上させるため「化学防護服」を共同開発することで事実上合意したことが1日、分かった。一昨年の「武器輸出三原則」緩和に伴う米国以外の国との共同開発の第1号案件で、月内にも文書を交わし最終合意する。オーストラリアとは潜水艦に関する技術提供の検討に入り、三原則の制約で出遅れていた国際共同開発への参入を加速させる。
日英間での共同開発は、昨年4月の日英首脳会談で合意。英側は155ミリ榴弾砲(火砲)の自動装填装置や艦艇エンジンの共同開発を打診してきた。ただ日本側は、第1号案件には攻撃よりも防御のイメージが強い装備品の方が国内の批判は少ないと判断、軍隊が装備する点で「武器」とみなされる化学防護服に絞り込み、英側も同意した。
化学防護服を共同開発するのは、アルジェリア人質事件に象徴される国際テロ組織の脅威に危機感を強めているためだ。CBRN(化学・生物・放射能・核兵器)を使うテロの危険性も高まっている。
CBRNテロの際の自衛隊などの任務は(1)物質の検知・識別(2)被災者捜索・搬出(3)除染(4)医療-が想定される。部隊が緊急展開し機動的に対処するには、化学防護服の性能向上が課題とされる。日本には先端技術があり、軽くて動きやすく、気体も液体も通さない布製防護服に英側の関心は高い。日本側は防護服に関する実戦データを英側から得ることを期待している。
一方、オーストラリアは海上自衛隊の最新鋭潜水艦「そうりゅう」型の推進機関の技術提供を求めてきている。同型は、浮上して酸素を取り込まないでも動力を得る「AIP機関」を採用しているのが特徴だ。
■武器輸出三原則 昭和42年に(1)共産圏(2)国連決議で禁止された国(3)国際紛争の当事国-への武器の輸出を禁じ、51年にこれ以外の国にも「慎む」と事実上の全面禁輸にした。その後、米国とのミサイル防衛の共同開発・生産などを例外扱いとし、野田佳彦内閣が一昨年12月に米国以外とも共同開発・生産できるよう緩和したが、「国際紛争の助長回避」の原則は維持。1日発表の官房長官談話では共同生産の部品供給先を「国連憲章に従う国」と明記した。
平成25年3月1日
F-35の製造等に係る国内企業の参画についての内閣官房長官談話
(平成25年3月1日)
1. 航空自衛隊の現用戦闘機の減耗を補充し、その近代化を図るための次期戦闘機については、平成23年12月20日の安全保障会議において、平成24年度以降、F-35A 42機を取得すること、一部の完成機輸入を除き、国内企業が製造に参画すること等を決定し、同日の閣議において了解された。F-35は、米国等の9か国によって開発中の最新鋭の戦闘機であり、その計画的な取得は我が国の防衛上不可欠である。政府としては、この安全保障会議決定及び閣議了解に基づき、平成25年度以降は、F-35の機体及び部品(以下「部品等」という。)の製造(整備を含む。以下同じ。)への国内企業の参画を行った上で、F-35Aを取得することとしている。F-35の部品等の製造への国内企業の参画は、戦闘機の運用・整備基盤を国内に維持する上で不可欠であり、また、我が国の防衛生産及び技術基盤の維持・育成・高度化に資することから、我が国の防衛に大きく寄与するものである。さらに、部品等の世界的な供給の安定化は米国等に資するほか、国内に設置される整備基盤により米軍に対する支援も可能となるため、日米安全保障体制の効果的な運用にも寄与するものである。
2. F-35については、従来我が国が取得した戦闘機と異なり、全てのF-35ユーザー国が世界規模で部品等を融通し合う国際的な後方支援システム(ALGS(Autonomic Logistics Global Sustainment)という新たな方式。以下「本システム」という。)が採用されている。本システムに参加することにより、必要なときに速やかに部品等の供給を受け、迅速な整備が可能となることから、我が国としてもより適切なコストでF-35Aの可動率を維持・向上するため、本システムへの参加が必要である。本システムに参加する場合には、国内企業が製造若しくは保管を行う部品等又は国内企業が提供するF-35に係る役務が我が国から我が国以外のF-35ユーザー国に提供されることが想定されるが、本システムでは、米国政府の一元的な管理の下、F-35ユーザー国以外への移転が厳しく制限されている。
3. 政府は、これまで、武器等の輸出については武器輸出三原則等によって慎重に対処してきたところであるが、上記のとおり、国内企業の参画は我が国の安全保障に大きく資することに鑑み、本システムの下、国内企業が製造若しくは保管を行うF-35の部品等又は国内企業が提供するF-35に係る役務の提供については、米国政府の一元的な管理の下で、F-35ユーザー国以外への移転を厳しく制限すること、及び移転は国連憲章の目的と原則に従うF-35ユーザー国に対するもののみに限定されること等により厳格な管理が行われることを前提として、武器輸出三原則等によらないこととする。
なお、政府としては、国連憲章を遵守するとの平和国家としての基本理念は維持していく考えである。