『教育再生』巻頭言―コンディは頭は切れるが賢くはない。 |
日本教育再生機構のホームページは以下のアドレス。
http://www.kyoiku-saisei.jp/index.html
なおライス元米国務長官については下記エントリ参照。
■核と瀬戸際政策(1)―正論臨時増刊号より
http://island.iza.ne.jp/blog/entry/2582125/
■櫻井よしこと国家基本問題研究所―北朝鮮問題を論じ尽くす(1)
http://island.iza.ne.jp/blog/entry/2591082/
【巻頭言】頭でなく、腹で理解できる人間を
ものごとの本質を見極め、誤りなく態度を決めるには判断基準がいる。あらゆる社会現象に関し、その基準は自由・民主・法の支配・人権という理念(あるいは価値観)だろう。この理念を増進する方向で政策を決め、揺るがぬ同志を選ばねばならない。基準が曖昧だと、方向を見失い、敵と味方の区別すらつかなくなる。昨年末に出た、米国のコンドリーサ・ライス前国務長官の回顧録は、そのことを教えてくれる貴重な資料である。
2005年9月にブッシュ政権が発動した北朝鮮に対する金融制裁(戦略的法執行)は、予想以上の効果を上げ、世界中の金融機関が、米当局に睨まれドル決済が出来なくなる事態を怖れて北朝鮮との取引を断った。これを緩めず継続強化していれば、金正日体制は数年を経ずして崩壊したであろう。北には制裁が効かないというのは神話に過ぎない。
追い詰められた北朝鮮は2006年10月、核実験実施で恫喝を掛けると同時に、制裁解除―話し合い解決を米側に持ちかけた。ここでライスが揺らぐ。制裁解除と引き換えに北を核廃棄に導けると期待を抱いたライスにとり、拉致問題で頑なな姿勢を取る「日本人とは残念ながら個人的に肌が合わない」関係となる。回顧録ではさらに、「日本側は、拉致問題でわれわれに助けさせるテコを失わないために、六者協議が失敗することを望んでいるのではないかと思われてきた。残りの任期中、私は核と拉致をリンクさせないよう闘った」と被害妄想に近い言葉まで並ぶ。
核問題が解決しない、どころか悪化したのは、日本のせいではなく、北に始めからその気がなかったからだ。金融制裁発動に中心的役割を果たしたある米側関係者が、数年前、筆者との懇談の中で、せっかく効いていた制裁を解除したライスについて漏らした一言が印象に残っている。「コンディは頭は切れるが賢くはない」(Condi is bright but not smart.)。ライスは頭がよい人である。だから、騙されたことに最終的には気付く。
「私は、大統領に危ない橋を渡らせていることは分かっていた。もし北朝鮮側が約束を守らなければ、彼は凄まじい批判に晒されるだろう。不幸にも、まさにそういう事態に立ち至ってしまった」。ライスは続ける。「結局のところ、危険な核を手にしたあの暴政が倒れない限り、誰も安心して眠れないということだ」。その通りである。その「結局のところ」を頭でではなく、終始、腹で理解できる人間を育てるのが教育の課題であり役割だろう。