衛藤征士郎「日朝宥和利権議連」会長のインタビュー |
下記インタビューについて
北朝鮮に対する謝罪・宥和外交と、利権獲得を目指す「日朝正常化議連」会長の衛藤征士郎(拉致議連幹部の衛藤晟一参院議員と区別するため、以下征士郎)は、「永遠に日朝が国交を持たないなんてことはあり得ない。北朝鮮と国交を正常化させるのは、気がついたときに日本が最後だったということがあってはならない」と述べているが、北朝鮮の現体制が永遠に続くと考え、しかもそこに疑問を持たないところに、この男の救いがたさがある。
「国交正常化したら、日本政府として拉致問題について、オランダのハーグの国際司法裁判所に提訴することもできる。今は国交がないから、できないのだ」という発言など、これが衆議院の副議長かと呆れるほど知識レベルも低い。
相手も同意しなければ、国際司法裁判所の手続きは始まらない。征士郎は、中学校の公民教科書から読み直すべきだ(ちなみに、私も監修に加わった育鵬社版を勧めたい)。北が同意するとすれば、それは時間稼ぎに使えると判断した場合のみだろう。
征士郎は過去に次のような発言をしている。
日本はかつて北朝鮮を侵略して甚大な被害を国家と国民にもたらしているのですから、当然われわれとしても、その事実を重く両肩に背負い込まないといけないのです。そして誠意をもって、ていねいに、北朝鮮と話し合うテーブルづくりから初めていく。それを議員外交でやっていこうではないか、と考えているのです。……(『世界』2008年7月号)
征士郎は、「私たちの直球を、向こうががっちり受け止めたのだ」と胸を張っているが、北から見れば、カモをがっちり抱き止めたというところだろう。
この種の論をなす人々への批判は随分書いてきたので、敢えて繰り返さない。下記エントリなど参照頂きたい。
■“親北・利権”衛藤征士郎と訪朝を計画した議員たち
https://island3.exblog.jp/22033875/
■北朝鮮に補償(経済協力金)は不要
http://island.iza.ne.jp/blog/entry/266944/
産経 2012.11.27 【高木桂一の『ここだけ』の話】
訪朝延期の衛藤議連会長が激白!!
10月12日に北から招待状 「私たちの直球受け止めた」
今月8~12日に予定されていた超党派の日朝国交正常化推進議員連盟メンバーの北朝鮮訪問が「延期」された。訪朝計画はどのように持ち上がり、今後、いかに北にアプローチしていくのかー。同議連会長の衛藤征士郎衆院副議長=自民党出身=が筆者のインタビューに応じ、日朝国交正常化や拉致問題解決に向けての決意などを示した。衛藤氏の発言要旨は以下の通り。
まずサッカー外交推進議連での訪朝浮上
なぜ、この時期に私たちの議連が動いたのか。11月15日にサッカーワールドカップ(W杯)3次予選の日朝戦が平壌で行われた。当初、私が会長を務める超党派のサッカー外交推進議連メンバーで、日本側のサポーターとして平壌を訪れようと北朝鮮側と調整していたが、結局とりやめた。
9月のW杯3次予選の対日本戦で北朝鮮から19人の選手、6人の役員らが来日した際に日本政府は非常に厳しい監視態勢を敷き、過剰に対応した。北朝鮮の選手たちは宿舎から出れず缶詰状態になった。スポーツマンシップに、もとることだ。
日本サッカー協会に確認したら、その通りだった。北朝鮮側の日本での窓口である朝鮮総連(在日本朝鮮人総連合会)の許宗萬(ホ・ジョンマン)責任副議長から私のところに「国会議員の皆さんが平壌に来られたら不愉快な思いをするだろうから、やめた方がいい」という連絡があった。私は許責任副議長と連絡を取り合っていた。
そこで、私は日朝国交正常化推進議連として政治レベルの直球を投げた。国交正常化に向け(1)スポーツ・文化(2)経済(3)政治―の3段階で関係が進展すればいいと考えていたが、私たちの直球を、向こうががっちり受け止めたのだ。
米国務省幹部も理解
10月初旬に米国の国務省情報管理分析局の部長ら5人が私をたずねて来て、拉致やミサイル、核などの問題について話をした。その際、訪朝計画を説明したら「よくわかった」と理解してもらった。
10月12日、北朝鮮側から総連の許責任副議長を介して「日朝国交正常化推進議連の衛藤会長の都合のいいときに来てください。歓迎する」という招待状を受け取った。
今月2日に参院控室で野田佳彦首相に会い、日朝国交正常化推進議連のスタンスと訪朝計画を説明した際、首相は「わかりました」ということで異論を唱えなかった。私が首相に「親書」を要請したという報道があったが、ありえない話だ。
ただ、民主党の樽床伸二幹事長代行から4日に「与党の議員は出せない」との連絡があり、最終的に国会を優先させるために延期することになった。
来年の「10・12」までに訪朝
憲法41条で「国会は国権の最高機関」とされている。立法府を構成する国会議員の外交は最高レベルのもので、議員外交に対し行政府は閣僚とはいえ、「ああだ、こうだ」とコメントする立場にない。外務省の佐々江賢一郎事務次官からは「国会の制裁決議もあり、行政府としては(訪朝を)バックアップできない」という趣旨の話があった。
北朝鮮からの招待状の有効期間は1年ぐらいだろうから、訪朝は来年10月12日までのいい時期を考えなければならない。今回の計画延期後も北朝鮮側の反応は変わらない。あくまで都合のいいときに訪朝してくださいということだ。
私たちは訪朝して、何か大きな成果を上げようとは考えていない。外交はすぐに成果を上げられるものではないからだ。訪朝前に拉致問題に関して具体的な話を北朝鮮側とはしない。行ってからの話だ。協議する相手は朝鮮労働党レベルだ。
拉致解決のために国交正常化を
議連の基本的な立ち位置は、国交正常化へのテーブルを作り、正常化後に拉致やミサイル、核などの問題をテーブルに載せ、ひとつひとつ解決する努力をしていくということだ。
日朝正常化交渉は平成3年1月に平壌で開かれたのを最初に、14年10月のクアラルンプールでの交渉まで計12回行われたが、協議が進まなかった。日本の朝鮮統治の問題や北朝鮮による拉致事件に加え、東西冷戦の枠組みの中で日本がついた西側の米国が朝鮮戦争に加担し、その影を引きずってきた。そうした三つの大きな制約があるからだ。
その間、日本は昭和40年に日韓基本条約を批准、発効させた。私はたまたま条約が発効した同年12月、東京都内の大学生による訪韓団のメンバーとして韓国に行った。私は日韓関係を含む朝鮮半島問題に大きな関心を持ち続けてきた政治家の一人だ。
「非」は往々にして日本にある
日韓関係は46年前に正常化したのに、なぜ日朝ではできないのか。
いろいろな要因はあるが、決定的なことは、拉致問題について平成20年8月の日朝実務者協議で全面的な調査のやり直しなどで合意したが、それが履行されずにいることだ。
日本側の当時の与党、自民党の外交部会、外交調査会で合意内容が了承されなかった。私は福田康夫内閣の発足に向け影ながら働いたが、当時の福田首相からは拉致や朝鮮半島の安全保障などの問題で汗をかくよう指示されていた。20年2月の李明博韓国大統領の就任直前に福田首相の命を受け、大統領にも会った。
残念ながら、この年の9月に福田首相が辞任された。北朝鮮側は日本の新内閣のスタンスを見守るということだったが、結局、国交正常化が前に進まない状況を作り出してしまった。
その「非」は、往々にして日本側にあると思う。国連安全保障理事会の制裁決議は非常に重く、従わなければならないが、拉致問題の全面解決なくして国交正常化に踏み込んではならないという考え方はどうだろうか。
拉致問題は国交を正常化し、公式のテーブルの上に載せて解決していく方が早い。拉致は日朝2国間の問題だが、核問題などをめぐる6カ国協議に半ば委ねている状態にあるのではないかと懸念している。
「制裁、制裁」と言っても、中国が北朝鮮に全面支援をすることは間違いなく、効果は非常に希薄になっている。韓国は戦略的には制裁するが、戦術的には対話路線に切り替えた。
世界で北朝鮮と国交を結ぶ国は161カ国あるが、主要国で国交がないのは日米とフランスだけだ。そのフランスも来年早々、平壌に文化センターの事務所を設置する。米国も朝鮮戦争時の軍人の遺骨収集を開始する。
拉致議連の手法は理解できない
20年8月以降、日朝2国間で政府は何をして、議員は何をしてきたのか。大きな軌道をつくるために汗をかいている人はいない。もし、やっているというのなら列挙してもらいたい。誰かがやるべきだろう。
永遠に日朝が国交を持たないなんてことはあり得ない。北朝鮮と国交を正常化させるのは、気がついたときに日本が最後だったということがあってはならない。
国交正常化したら、日本政府として拉致問題について、オランダのハーグの国際司法裁判所に提訴することもできる。今は国交がないから、できないのだ。
北朝鮮側にも明確に伝えている。一点は、14年9月の日朝首脳会談の日朝平壌宣言に基づき、拉致、ミサイル、核の諸問題を包括的に解決するということ。もう一点は、会長の私は永住外国人への参政権付与に反対だということだ。
超党派の拉致議連は北朝鮮を孤立化させないと拉致問題は解決しないという立場だが、どうやって拉致問題を解決するのか私には理解できない。国交を正常化させた方が拉致問題は早く解決する。
福田首相の訪朝はあり得た
とにかく拉致問題を解決するには、トップの野田首相が北朝鮮に乗り込んでいくことだ。小泉純一郎元首相が2回にわたり訪朝して努力されたように…。しかし、拉致問題について野田首相がどう考えているのか分からない。拉致被害者を一日でも早く救出しようという信念があるなら、もっと違う動きをするだろう。
福田元首相があと1年やっていれば、首相として必ず北朝鮮に行ったと思う。私はその地ならしをやっていた。
家族会や救う会などから反対や反発はあっても、拉致問題解決への一助になるという使命感をもっており、どうのこうのする気はない。