国基研でチャック・ダウンズと意見交換―北朝鮮問題 |
7月16日(金)、朝8時半から旧知の北朝鮮問題専門家チャック・ダウンズを国家基本問題研究所に招き、意見交換を行った。
ダウンズは現在、ワシントンに事務所を置く人権組織「北朝鮮人権委員会」(Committee for Human Rights in North Korea, HRNKー写真は理事会の風景)の専務理事(Executive Director)を務めている。北朝鮮の交渉パターンを分析した名著『オーバー・ザ・ライン』の著者でもある。
今回の来日では、中井洽拉致担当相を始めとする政府関係者、安倍晋三元首相、中山恭子元拉致担当相らと面談したという。
前夜に懇談した際にも聞いたのだが、「日本側には、拉致問題で何もできないという雰囲気が感じられた。一方、ワシントンでは、逆に対北問題を動かせるチャンスというムードが出てきている」とのことだった。
哨戒艦撃沈事件で、対北宥和に傾きかけていた韓国政府がある程度姿勢を正したことや、死を意識しだした金正日が妹婿・張成沢をナンバー2の地位(国防副委員長)に付けたが、張は実務家として結果と出さねばならない(He has to produce results.)ことなどが、米側の見方の背後にあるようだ。
もっともオバマ政権の対応にはちぐはぐな面が見られる。
ボブ・キング北朝鮮人権問題特使は3回、カート・キャンベル国務次官補(東アジア・太平洋担当)は2回、ダウンズの事務所での会議に参加したという。「話を聞こうとする姿勢はある」とのことだ。
しかし、「キャンベルは北のテロ支援国家再指定に反対しており、理由はよく分からない」ともダウンズは言う。
また米議会は2年以上、北朝鮮問題で公聴会を開いていない。上下両院において目下多数を占める民主党に積極的な議員がいないということだろう。
上院において、北や中国の人権問題で最も筋の通った言動を展開してきたサム・ブラウンバック議員は、間もなく議会を去り、地元カンザス州の知事選に挑戦する予定である。
誰かブラウンバックの代わりになるような上院議員はいないかとダウンズに聞いたところ、「あれだけ献身的な議員はいない。彼は頼めば何でも熱心に応えてくれた」とのことだった。
下院は、11月の中間選挙で共和党が勝利を収めそうで、そうなれば外交委員長就任が確実なイリアナ・ロスレーティネン議員は、北朝鮮問題をかなり積極的に取り上げるだろう。
同議員の上級政策スタッフ、デニス・ハルピンは、ダウンズらと常に歩調を合わせてきた人物である。私も旧知の間柄だ。
最後に櫻井よしこ国基研理事長が、「あなたは来日のたび必ずここを訪れなければならない」としめ、有意義な意見交換を終えた。