拉致問題―民間の運動と政治家の動き |
先週金曜日、自民党の古屋圭司代議士(拉致議連幹事長)から、「国会で、城島光力・衆院拉致特委員長(民主党)の朝鮮総連との不適切な関係を追及しておいたよ」と聞かされた。
参考のため、当該議事録を引いておく。
古屋氏はまず岡田外相に対し、「拉致問題の進展なくして重油などの対北朝鮮支援に絶対参加しない、との政府方針を堅持するか」と質している。民主党には、前原誠司氏その他、公然と重油供給への参加を主張してきた議員もおり、ここは重要ポイントである。
岡田外相の答は、拉致をも含む進展がなければ「本格的な支援というのはない」という危うさを覚えさせるものだ。この点は、継続的に野党側から釘を刺してもらいたい。
城島・拉致特委員長の「金正日の生誕を祝う朝鮮総連主催のパーティー」出席は論外である。
朝鮮学校への実質的補助をめぐる古屋議員と中井大臣のやりとりは、双方適切だと思う。この線で実行を望みたい。
なお、本日発売の『週刊新潮』に井川朗・救う会和歌山代表の手記が載っている。氏が指摘する運動「沈滞」の理由の一つは、運動が政治家の動員にある程度成功してきたことにあると思う。
例えば、下記の議場でのやりとりなども、政治が無関心だった頃なら、民間の運動体が集会・デモなどで、一々やり玉に挙げねばならなかったろう。
今は、拉致議連の幹部などが率先して、国会の場で取り上げてくれる。ちなみに、有志議員からの照会に対し、あるいはこちらから進んで、追及すべきポイントを日常的に提供している中心は、西岡力氏(救う会全国協議会会長代行)である。
井川氏の手記では、西岡氏のそうした努力への言及が見当たらないので、補足しておく。
ともあれ、拉致被害者奪還は「国の主権と安全保障」の問題であり、その方向で運動を強めねばならないという、井川氏の基本的な問題意識は正当だ。
拉致問題や主権・安全保障全般に関し、不見識な言動を取る議員はなお少なからずいる。というより、大変多い。
議員がもっとも怖いのは、地元有権者の声である。「まず拉致被害者を返してもらいたい。それまで不法国家北朝鮮と大阪府はお付き合いしない」という橋下府知事の認識の半分でも、各議員や首長が共有・実践するなら、流れは一段と変わるはずだ。
衆議院会議録
北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会
平成22年3月15日(月曜日)
委員長 城島光力
外務大臣 岡田克也
国務大臣 中井洽(国家公安委員会委員長、拉致問題担当)
他委員多数
……
○古屋圭司委員(自民党)……北朝鮮が平成二十年に、重油支援に我々が参加していないにもかかわらず、拉致問題に関して交渉を再開してもいいですよという意思を示したんですね。あのときには、総理大臣が交代をするとか政治的な要素もあり、結果として、調査とかやり直しが向こうの一方的な通知により中止になってしまったけれども、制裁をして重油支援に参加をしていなくても拉致問題の交渉は進められるという証左なんですよ。
北朝鮮には、重油支援を受け取った後で、昨年は二度も実は核実験をしているというケースがあるんですね。ということは、重油支援そのものが失敗をしているということですよ。融和策では絶対成果が上がらない、やはり圧力なくして北朝鮮を動かすことはできないと思います。
……具体的に聞きます。六者協議が、仮に再開をされた場合でも、拉致問題の進展なしには重油支援などの対北朝鮮支援には絶対に参加しないという政府方針を堅持していただけますか。
○岡田国務大臣 ……我々は原則を曲げるつもりはございません。したがって、無条件に六者協議の場に戻ってくるということでなければ、例えば、制裁を解除しろと今北朝鮮が言っているわけでありますが、そういう状況の中では六者協議が開けるはずがない、そういうふうに考えております。
……仮定の御質問にお答えするとしたら、基本的に我々は、この六者協議の中で、核の問題、ミサイルの問題、そして拉致の問題についてもきちんと解決を見出していく、そういうことがない限り本格的な支援というのはない、そういうふうに考えているところでございます。
○古屋(圭)委員 今、要するに、拉致、核、ミサイル、包括的に解決して、特に拉致問題が進展をしない限り重油支援などに一切参加しないというふうに私は受けとめました。……
○城島委員長 外務大臣はここで御退席いただいて結構でございます。……
○古屋(圭)委員 ちょっと城島委員長に御質問をさせていただきたいと思うんです。この委員会のルール上、委員長に質問はできないというルールはございませんので、あえて聞かせていただきたいと思います。
委員長は、ことし二月、金正日の生誕を祝う朝鮮総連主催のパーティーに出席をされたというふうに聞き及んでおります。そこで祝辞を述べられたということであります。一議員が行くことにとやかく言うものではありませんけれども、やはり委員長という公的な立場で、これはいかがなものか。……
○城島委員長 総連の方は、出席したことは事実でありますが、祝辞を述べたようなこともありませんで、名刺を渡してすぐ帰りました。だから、滞在時間は三十分ぐらいだと思います。……
○古屋(圭)委員 ……やはり、委員長の立場で朝鮮総連のパーティーに出かけるということ自身がやや軽率な行動だったのではないか。
……中井大臣にお伺いします。
高校無償化法案、先週、衆議院をあんな形で通過して非常に残念で、ほとんど消化不良、議論不十分ということでありました。……我が党としては、朝鮮高校への支援はすべきでないという結論を出しました。
一方、中井大臣はたびたび、朝鮮高校の無償化は適用すべきでないというような趣旨の発言をされておられます。これがきっかけで世論の注目を集めたという意味で、勇気ある発言であって、私は評価したいと思う。
確かに、これは中井大臣の担当ではありませんけれども、朝鮮高校への支給はすべきかすべきでないか、まず中井大臣としてのお考えをお聞きしたいと思います。
○中井国務大臣 自民党さんにおかれましては、委員会の質疑で消化不良という思いがおありの中、部会をお開きいただいて、無償化すべきでないという応援のエールをお送りいただきましたことを感謝申し上げます。
資料的には、朝鮮人学校がどうだこうだということについて、一方的なことではありますが、私の手元にないわけではありません。また、長年いろいろなことを聞いておりますので、思いもございます。しかし、私は拉致担当大臣として、川端大臣に、国を挙げて制裁をしている時期に、その国民感情を考えてこれはお控えなさるべきだ、こういうことを言いまして以来、終始一貫、それを申し上げております。何も態度は変わっておりません。よろしく御理解のほどお願いいたします。
○古屋(圭)委員 担当大臣としては至極当然、かつ、ぶれのないお答えだったというふうに思います。
私も全く同感でして、朝鮮学校は朝鮮総連の支配下にあって、金正日の指示をダイレクトに受けています。そして、今度の法案は、実は、直接本人であるとか家族に支給されるのではなくて、代理受領なんですね。代理受領ということは、朝鮮高校が受領する、すなわち朝鮮総連が受領する。では、果たしてそのお金がちゃんと真っ当に教育に使われているのかどうか、これはチェックのすべがないんですよ。
我々は、今北朝鮮に対して制裁を科しています。すなわち、一円の税金も放り込んでいないんです。これをもし認めるということは、我々の税金を一年間に二億四千万円放り込むということになるわけでありまして、そういった趣旨から、私は決して民族差別をしようとか教育差別をしようということを是認しているわけではありません、国の基本ルール、要するに、国家が定めた基本方針にこれは反するものであって、しっかりそれは対応していただきたい。
何か聞くところによると、第三者委員会をつくって調査をする、これこそ逃げ以外の何物でもありませんよ。政治主導を標榜している民主党らしくない。やはり、しっかり中井大臣が指導力を発揮して、はっきりこれは言うべきじゃないでしょうか。私は、強くそれを申し上げたいというふうに思います。……