北朝鮮におけるアメリカ「連絡事務所」の設置について |
下記ニュースについて
12月8日から、米オバマ政権のスティーブン・ボズワース北朝鮮政策担当特別代表が訪朝の予定だが、「連絡事務所」開設問題も話し合うと一部で伝えられている。
連絡事務所の相互設置については、1994年10月21日の「米朝間で合意された枠組み」(枠組み合意)で一旦基本取り決めがなされている。
北朝鮮は、以前から事実上の連絡事務所というべき「国連代表部」をニューヨークに持っており、米側が、ピョンヤンに同様の拠点を得ることは、それが“宥和政策の窓口”にならない限り、日本にとっても色々利用価値があろう(日米の信頼関係いかんだが)。
産経の記事に続いて、拙著『アメリカ・北朝鮮抗争史』から、連絡事務所に関する部分を転載しておく。
産経
米が北朝鮮に連絡事務所開設を提案
2009.11.23 16:37
韓国の民間運営の対北朝鮮ラジオ「開かれた北朝鮮放送」は23日付のインターネット版は、米国が10月末、北朝鮮内に米国の連絡事務所開設を提案し、米朝は近く開かれる協議で連絡事務所の開設問題も話し合う見通しだと伝えた。北朝鮮消息筋が明らかにした。
連絡事務所開設に対し北朝鮮当局は、海外からの投資誘致拡大に有利になると歓迎する見方と金正日体制の根幹を成してきた反米敵対意識が薄れることを憂慮する慎重論があり、現在検討中という。(ソウル 水沼啓子)
■島田洋一『アメリカ・北朝鮮抗争史』より
枠組み合意のポイント
米朝枠組み合意は、北の核開発問題に緊急対処するため、核防条約の一部不履行を黙認する形で政治解決を図ったものである。
付属文書として、「非公開覚書」があり、また南北非核化共同宣言、翌年に締結されたKEDO供給協定などと連動している部分がある。以下、主な項目について、その中身を検討しておこう。
……
2.双方は、政治的・経済的関係の完全な正常化に向け動く。
……
(2)双方は、専門家協議を経た後、互いの首都に連絡事務所を設置する。
(3)双方の懸案事項に関し進展が得られた段階で、両国関係を大使級に引き上げる。
当初、連絡事務所は数カ月以内にも設置可能と見られていたが、その後、専門家協議の場で、米側が、連絡事務所員(事実上の外交官)の板門店通過を認めること、平壌駐在の米側所員にワシントン駐在の北側所員と同レベルの移動の自由を認めること、などを要求したのに対し、北は、板門店ルートは郵袋については認めるが人の通過は認めない、米側所員の移動は平壌と琴湖(軽水炉建設予定地)に限定する、などと主張し、交渉はそのまま行き詰まった。
とりあえず、米側が、ニューヨークの北朝鮮国連代表部に、米政府との連絡係として1名の外交官の配属を認める、一方北側は、在平壌スウェーデン大使館員に、アメリカの利益代表の資格を認める(たとえば、北朝鮮内で米国人が拘束された場合の接見などに当たる)との暫定合意ができたのみであった。
2000年以降、次々に北と国交を樹立した欧州各国が、外交官の板門店通過を条件としなかったため、米側もその点については主張を緩和したが、基本的に、北が、米政府関係者が領域内を「うろつき回る」ことにきわめて神経質であるため、「連絡事務所」問題の行き詰まりは解消されない状態が続いた。
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