モルディブより先に自沈する日本―鳩山“自虐プレー”の行方 |
下記ニュースについて
昨日のエントリの冒頭、次のように書いた。
好評の西村幸祐責任編集「撃論ムック」シリーズの最新刊、『迷走 日本の行方』(オークラ出版)が出た。私も、「アメリカは新政権をどう見たか」という一文を寄せている。鳩山訪米、国連演説に対する米メディアや識者の反応を扱ったものだ。
関連する記事が出たので、上記拙稿から、鳩山氏の「温室効果ガス25%削減」宣言に関する部分だけ、引いておく。
「25%削減」については、例えば9月23日付のニューヨーク・タイムズが、「数カ国の指導者が重要な公約を行った」として、鳩山首相とモルディブ大統領の演説を紹介している。
もっとも、「すべての主要国の参加による意欲的な目標の合意が、我が国の国際社会への約束の前提」という鳩山演説に盛り込まれた(現実主義的な関係者が盛り込ませた)重要な但書への言及はなく、数字が一人歩きしかねない危さを改めて感じさせた(同日付のワシントン・ポストは、但書に言及している)。
なお、モルディブ大統領は、2020年までのカーボン・ニュートラル達成を掲げたが、同国は、海面上昇が国家存亡に関わる島嶼国であり、世界の温暖化ガス排出量に占める割合も限りなくゼロに近い。
排出削減を迫られる先進、新興産業国家の内では、鳩山演説の“前のめり”ぶりがきわ立ったと言えるだろう。
ただしほとんどの報道は、二大排出国である米中の対応(の不十分さ)に焦点を当てており、鳩山演説の扱いは小さい。これは、健全なバランス感覚である。すでにエネルギーの効率使用がかなり進んだ日本が、今後、日本企業や国民を相当鞭打たねば絞り出せない程度の温室効果ガス削減量を、米中なら当たり前の努力で出せる。
エネルギー・経済統計要覧2009年版によれば、世界のCO2排出量に占める割合はアメリカ(1位)21.1%、中国(2位)20.6%で、両国合わせて41%を越えている。一方、日本の排出量は4.5%(5位)。日本が25%減らしても全世界の排出量のわずか1.25%に過ぎない。鳩山氏の“自虐プレー”を見て、その場にいた関係者は拍手を送ったかも知れないが、メディア一般の関心は、当然ながら、アメリカと中国に集中したようだ。
鳩山流“マゾ・プレー”を実践するなら、日本の国民経済は、モルディブが温暖化で海面下に沈む遙か以前に、自沈するだろう。
ふくい健康の森
イザ!ニュース
中国、CO2排出量世界一 高まる国際圧力 省エネ路線転換なるか
2009/10/20 15:05
地球温暖化の原因とされる二酸化炭素(CO2)をめぐり、中国の排出量が米国を抜いて世界一となったことは、10月8日付のEXでも取り上げた。先進国と新興国との対立の図式で語られることが多い環境問題だが、今後、先進国の中国への圧力は強まるとの見方が強まるとみられている。その中国は、経済発展とともに電力需要は依然旺盛で、国際交渉は簡単ではないことをうかがわせる。
■シーン1
統計は国際エネルギー機関(IEA)がまとめた「2009年版温室効果ガスの排出統計」。07年のCO2排出量をまとめた。
それによると、中国は1990年に比べて約3倍となる約60億7100万トンと、世界最大だった米国の57億6900万トンを上回った。
前年比では米国の1%増に対し、中国は約8%増えた。2000年の中国の排出量は約31億トンだったので、7年間でほぼ2倍に拡大した計算となる。
ちなみに、日本は12億トンで前の年に比べ2%増で、ロシア、インドに続く5位。以下、ドイツ、カナダ、英国、韓国、イランの順に続き、これら10カ国で世界の排出の約3分の2を占めている。
統計によれば、世界全体に占める中国の排出量は約21%。IEAは「30年には中国の排出が世界の30%近くに達する」と予測しており、米国の13%前後を大きく上回るとみている。
地球温暖化問題をめぐっては、今年7月、主要国(G8)や中国やインドなど新興国を加えた主要経済国フォーラム(MEF)で、「気温上昇を産業革命以前から2度以内に抑える」ことを、長期目標として共有することで合意した。
この目標に照らし、IEAは、先進国はCO2排出量を07年の水準から段階的に引き下げる必要があると強調。その上で「ブラジル、中国、中東諸国、ロシア、南アフリカの主要国は、20年までにCO2排出量の拡大を停止する必要がある」と指摘。全世界の化石燃料の使用は20年を前にピークを迎える必要があると、喫緊の課題であると結んでいる。
■シーン2 需要旺盛…火力発電所建設なおハイペース
アンモナイトの化石が博物館のショーケースに並んでいるような光景。よく見ると、中央に人の姿が確認できる。中国湖北省・長江中流域の三峡ダム水力発電所建設現場。26基作られる発電機のプラントの一部が連なっている。三峡ダムのように、原子力発電所や水力発電所など、CO2排出の少ない発電所の建設が進む。
他方、石炭火力など多量のCO2を排出する発電所建設もハイペースなのだそうだ。IEAは中国が今後、省エネの努力をしたとしても、石炭火力発電所の発電量はいっそう増え続け、2020年には07年比で約5割増えるとの予測もだしている。中国は、揺るぎない「CO2排出大国」への道を邁進(まいしん)しているのだ。
地球温暖化問題をめぐり、中国はこれまで国際交渉の場で「先進国の責任」を強調、取り組みに消極的だった。今回のIEAの統計で不名誉な結果となり、一段と厳しい国際社会の視線にさらされることは間違いない。経済成長とCO2排出抑制の両立という、難しいかじ取りを追究することになる。
世界90カ国以上の指導者が出席し、9月ニューヨークで行われた国連気候変動首脳会合。日本の鳩山由紀夫首相(66)が「1990年比で2020年までに25%削減」という野心的な目標値を表明した場で、中国の胡錦濤(こ・きんとう)国家主席も「国内総生産(GDP)当たりのCO2排出量を20年までに05年比で大幅削減するよう努力する」と、新たな目標を設定したと表明した。
■国際交渉に変化与えるか
ロイター通信は、中国環境保護省は国連での胡主席演説を受け、11年からの第12次5カ年計画への「温室効果ガス排出権取引制度」の導入などを検討し始めたと報じた。
地球温暖化問題はこれまで、国際的な枠組みに新興国を抱き込みたい先進国側と、より先進国の厳しい率先垂範を求める新興国側という対立の図式で議論が進んできた。今回の統計は、こうした図式に影響を与えるとの見方もある。
今年12月には、国連の気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)が開かれ、13年以降の温暖化対策の国際的枠組み(ポスト京都議定書)を規定する議論が開かれる。
IEAが先に開いた閣僚理事会では、新興国への省エネ技術支援にも踏み込み、中国やロシアなどIEA非加盟国との連携を強化する方針を表明。新興国を含めた地球規模での議論が期待される。
(文:飯村文紀/SANKEI EXPRESS)
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■三峡ダム 中国湖北省・長江中流に建設中のダム。コンクリート堤の高さは185メートル、長さは2310メートル。ダム貯水池の長さは約660キロにもなる。水力発電設備は26基作られ、完成すれば世界最大の計約1820万キロワットの発電が可能で、富山県のクロヨン(黒部第4ダム)54基分。中国の年間発生電力量の1割に迫る発電能力がある。1919年、革命家の孫文(1866~1925年)が提唱し、その構想は中国共産党政権の毛沢東(1893~1976年)らが引き継いだ。94年12月に正式着工した。ダム本体は2006年に完成しており、今年中に全プロジェクトが完成予定。