ダニエル・シルバの国際テロ小説 『亡命者』 (The Defector) |
ダニエル・シルバの国際テロ小説『亡命者』を読んだ(Daniel Silva, The Defector, 2009)。
イスラエル情報部員ガブリエル・アロン(Gabriel Allon)を主人公とするシリーズの最新作である。
前作『モスクワ・ルール』に登場し、復讐心に燃えるロシアの悪徳武器商人(元KGB要員イワン・ハルコフ)とイスラエル情報部の間で最終決戦が展開される。ハルコフは、FSB(ロシア連邦保安庁。KGBの後身)ひいてはロシア大統領を後ろ盾にもつ。「ロシア大統領は上前をはね続ける。ツァーリは、イワンがよく言うように、常に上前をはねる」(And the Russian President continued to take his cut. The tsar, as Ivan liked to say, always took his cut.)
冒頭近く、ハルコフ一派によるロシア人亡命者(在ロンドン)の拉致を許したイギリス秘密情報部(MI6)トップに対し、アロンが言う。
「リトビネンコ殺害後のあなた方の対応が、こうした策動に出ても逃げおおせると恐らくロシア側を確信させたのだろう。結局のところ、ロシア側は核テロというべき行為をロンドンの真ん中で敢行したが、あなた方は外交的しっぺを返したのみだった」
(原文)“Your conduct after Litvinenko’s murder probably convinced the Russians they could pull a stunt like this and get away with it. After all, the Russians carried out what amounted to an act of nuclear terrorism in the heart of
アレクサンドル・リトビネンコは、元ロシア情報部員で、亡命先のロンドンでプーチン政権批判を展開中、刺客に放射性物質ポロニウム210を盛られて死亡した。
アロンの妻(やはりイスラエル情報部員)が拉致監禁され、救出作戦に当たったアロンらも、ロシア脱出に失敗、死に直面するなど曲折を経て、最後はアロンによるハルコフ射殺で幕を閉じる。
■関連エントリ
国際スパイ小説『モスクワ・ルール』(ダニエル・シルバ著)
http://island.iza.ne.jp/blog/entry/714006