グレッグ・アイルズのサイコ・サスペンス『死の眠り』 |
グレッグ・アイルズのサイコ・サスペンス『死の眠り』を読んだ(Greg Iles, Dead Sleep, 2001)。
アメリカ南部ニューオーリンズで若い女性が連続で誘拐され、眠ったような死んだような被害者の裸体を描いた絵画作品が出回るところから小説は始まる。
頻繁に意外な展開があり、人物も生き生き描かれている。通俗的内容だが読み進まずにはおられない面白さがある。
もっとも、FBI捜査陣の一員である精神分析医に「多重人格障害。これは極度にまれだ。映画や小説が人々に信じ込ませようとしてきたよりもずっとまれだ」(“Multiple-personality disorder. It’s extremely rare. Much rarer than films or novels would have the public believe.”)と言わせておきながら、結局、犯人が多重人格障害者だったという結末は、安易といえば安易だろう。
謎解き部分より、途中経過の方に、より作家の力量が窺える。
『戦慄の眠り』の題で邦訳があるようだ。