古森義久『オバマ大統領と日本沈没』 |
古森義久氏が、新著『オバマ大統領と日本沈没』の中で、「全般に中国に異様なほど好意的な『専門家』たちが民主党側には多い」として具体例を指摘している。
中でも、同氏の以前の記事から引いた次の部分など、改めて嘆息させられる(pp.215-7)。ここでは、当初の記事全体を掲げておく。
産経新聞 10月2日2時40分更新
日中険悪化、責任は日本 クリントン政権時の対日要職経験者が見解
領海侵犯…公表して挑発した/ガス田…控えめに対応せよ/暴力デモ…和解的態度が欠落
【ワシントン=古森義久】日中関係の悪化は日本側の挑発が原因だとの見解がクリントン前米民主党政権の対日関係の要職にあった学者から三十日、表明された。
米国の国防大学と大手研究機関のAEIが共催した「アジアにおける中国」というタイトルのセミナーでパネリストとして意見を発表した外交評議会の上級研究員、エドワード・リンカーン氏は「東アジア共同体」への障壁の一つとして日中関係の悪化を挙げ、原因について「ほとんどが日本側によって取られた挑発行為による」と述べた。
リンカーン氏は挑発の実例として、「小泉首相の靖国神社参拝と右翼の歴史教科書の採択」を挙げ、ここ一年半ほど日本側が中国側に明確に反論をするようになったことが、「中国を悪者にする言辞」だと指摘した。
質疑応答で、「中国側の潜水艦の日本領海侵入、東シナ海の紛争海域でのガス田の一方的開発、日本大使館などを破壊した反日暴力デモなどは挑発ではないのか」という質問に対し、同氏は「潜水艦の領海侵入を日本政府は公表すべきでなかった」と述べ、情報公表が中国への挑発となったという見解を示した。
同氏は中国のガス田開発にも日本側はもっと控えめな態度で応じるべきだと述べ、反日暴力デモについては、「中国が自国への挑発とみなす外国の行動にはあの種のデモで対応することはすでに分かっていたのだから、日本側はデモの前からもっと和解的な態度をみせるべきだった」と答え、日中関係の悪化や摩擦は事実上、みな日本側の「挑発」に原因があるとする見方を繰り返した。
同氏はクリントン政権時代に三年間ほどモンデール駐日米大使の特別補佐官として勤務した民主党リベラル派。リベラル派には、中国側の日本非難をすべて「靖国」や「教科書」のせいにする傾向が強く、中国共産党の統治の正当性誇示のための反日宣伝が原因だとするブッシュ政権寄りの識者たちとは激しいコントラストを描いている。
古森氏は、「エドワード・リンカーン氏の日本非難は、民主党筋ではほんの一例に過ぎない」としている。
共和党側にも、キッシンジャー、スコークロフト(ともに国家安全保障担当補佐官など歴任)のように、没理念的な親中派は存在する。が、民主党側には、確かに、露骨に「反日」を感じさせる青白いインテリが相当いるように思う。
これに対しては、“とにかく頭を下げてやり過ごす”という卑屈な対応ではなく、オープンな場でしっかり反論していくことが重要だ。
親中反日インテリも要路にいるが(これはフランクリン・ルーズベルト政権の頃からそうだ)、率直な議論には率直に耳を傾けるフェアな人間もアメリカには多くいる(彼らにこちらの主張を伝えるルートも様々にある)。
日本政府は、後者を視野に、戦略的な広報外交を展開せねばならない。それば出来なければ、本書のタイトルのように「日本沈没」となるだろう。