「長谷川はメジャーで通用しない」 発言の責任は? |
移動中に読むため、駅の書店で、『長谷川滋利のメジャーリーグがますます楽しくなる観戦術』を買った。予想通り、大変面白かった。
大リーグのエンジェルスやマリナーズで活躍した長谷川投手の本である。
難しい場面でリリーフ役を託された長谷川投手が、相手バッターをうまく打ち取るさまに何度も感動した記憶がある。
決して鳴り物入りで渡米したわけではなかったはずだが、オールスター戦に出場するところまで行った。
今日、テレビでは、シアトル・マリナーズ対テキサス・レンジャーズ戦の中継があった。
同書に次のようにある。
もし、メジャーリーグでマイレージのポイントが導入されたら、マリナーズの選手たちがダントツでトップになる。メジャーリーグ30球団のうち、マリナーズがもっとも移動距離が長いのである。……
シアトルは西海岸の一番北にあって、……同じ地区にいるのにテキサス・レンジャーズのあるアーリントンにいくには4時間くらい掛かる。……
たとえばシアトルで試合をして、その日のうちに東海岸に移動しなければならない場合は、午後1時に試合が始まって、試合が終わるのがだいたい4時頃。肩のアイシングやらシャワーを浴びたりして、バスで球場を出るのが6時前くらい。飛行機に乗り込むのが7時として、目的地に到着するのがちょうど深夜0時とかそれくらい。ところが東海岸とは時差があって、時計の針を3時間進めなければいけないから、ベッドに入るのは午前3時とか、4時になっている。つらいです。この生活は。
なお、長谷川氏によれば、レンジャーズの本拠地「レンジャーズ・ボールパークは、打球がよく飛ぶ」そうだ。
ここは6月から7月にかけて日本の梅雨のような天気になるが、球場周辺にはたぶん上昇気流があって、ボールが風に乗って飛距離がよく伸びるのだ。標高1600mにあって空気が薄いため飛距離が出るコロラド・ロッキーズのアメリカン・リーグ版と考えてもらえばいい。ライトフライだろうと思っていると、いつの間にかスタンドに入っていて、「あれ?」と思うことがよくあった。
そうなるとチーム編成にも影響があって、フリーエージェントを獲得した投手は、レンジャーズには行きたがらないが、反対にホームランバッターはレンジャーズへの移籍に前向きになる。……
というわけで毎年のように「打高投低」のチームができあがる。
上に引用したのは、たまたまマリナーズとレンジャーズに関係した箇所で、これ以外にもほとんど毎ページ、私には、新たな発見やなるほどと思う部分があった。
あえて比較するまでもないが、このところメディアで飛び交う「政局論」「安倍政権論」には、朝青龍の心身の状態がどうこうといった議論と同次元のものが多く、面白くもなければ、ためにもならない。
長谷川氏の本を読んで、全国紙やテレビで交わされる政治論も、せめてこの半分のレベルくらいまで達してくれればと感じた(まあ無理だろうが)。
ところで、長谷川投手が大リーグに挑戦した最初のシーズン、テレビで解説をしていた山田久志氏(阪急ブレーブスのかつてのエース)が、「きつい言い方になるが、私は長谷川は大リーグで通用しないと思っている」と断言するのを聞いて複雑な気分になった。
「せっかく頑張っているのに心ない言い方をするものだ」と思い、それ以来、長谷川投手の姿をテレビで見かけるたびに、ぜひ結果を出し、見返してもらいたいと、心の中で声援していた。
「通用しない」選手が、オールスター・ゲームに出場できるはずがないだろう。山田氏は、自らの発言の責任をどう取ったのだろうか。