国務省好みの膠着状態 |
月刊誌『現代コリア』に、「アメリカはどう動くか」というタイトルで連載を続けている。
下記は、最新号(2007年9月号)に載せたものの冒頭部分である。
国務省好みの膠着状態
ブッシュ政権内で国務省が主導権を得た今年はじめ以来、北朝鮮問題は、“北ペースでの膠着状態”が続いている。しばらく休載、あるいは連載のタイトルを、「アメリカはいつまた動くのか」に変えたいくらいだ。
冷戦時代のキーワードの一つに「封じ込め(containment)」がある。
封じ込めとは、米ソ間の膠着状態継続に他ならないが、それを、破滅的戦争が回避されている状態と積極的に評価し、冷戦史を、トルーマン政権以来の封じ込め政策の成功と捉えるのが、国務省的史観である。
ニクソン、キッシンジャーが進めたデタント(緊張緩和)も、米ソの半永久的共存を所与とした上で、相手陣営の動揺(中ソ対立)を適度に利用しつつ、対立構造をより摩擦の小さいものに変えていこうという、いわば膠着状態の精緻化を目指したものに過ぎない。
ミニ冷戦というべき北朝鮮問題を国務省に委ねれば、当然、半世紀近い冷戦期にビルト・インされた組織的記憶に従って、事が進められることになる。
すなわち、膠着状態の精緻化を目指し、延々と続けられる二国間協議、シャトル外交、作業部会、六者全体会合……等々である。
その間、何も具体的に解決しなくとも、破滅的戦争が回避されている限り、北朝鮮封じ込め政策の成功、「不満足だが、さほど悪くはない(not so bad) 」状態と評価されることになる。
クリストファー・ヒル氏らの頭に、ブッシュ大統領の任期中に北朝鮮問題を解決せねば、といった発想はない。
冷戦が続く限り、共産圏の民衆は抑圧下で呻吟する、多様な経済的、軍事的圧力を掛けてソ連圏を崩壊させ、冷戦を自由主義陣営が勝利する形で終わらせねばならない、とするロナルド・レーガン的発想は、国務官僚から見れば、非現実的で危険な火遊びでしかない。